2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年4月6日

「大国に相応しい頭脳」の意味とは?

 「大国に相応しい頭脳」が何を意味していたのか。今にして振り返れば習近平その人を指していたのかもしれないが、同じ2010年に出版された『中国夢 中美世紀対決・軍人要発言』(劉明福著、中華書局)は、総合国力で世界一を目指すことを熱く説き掛ける。

 世界第1の中国こそが、①発展途上国が先進国を打ち破り、②中国の特色を持つ社会主義が世界最大の資本主義国より優れ、③東方文明が生命力・創造力で西方文明を凌駕し、④白人優越主義を退け、⑤西欧中心の優越感を打ち砕く――。

 「中国が世界1になるという現在進行形の偉業は、経済的意義にとどまらず、政治的・文化的意義を秘め、将来の中国にとてつもなく大きな政治的・道義的資源をもたらす」と胸を張り、世界第1の中国を支える前提にアメリカを凌ぐ軍事力の必要性を力説した。

 「政治的・道義的資源」を備えた世界1の中国こそが、①アメリカ式民主主義より優れた「『中式民主』の奇跡」、②福祉国家より均等の「『財富分配』の奇跡」、③多党政治より公平な1党独裁下での「『長治久廉』の奇跡」――3つの奇跡を人類にもたらすと結論づけた。なお「長治久廉」とは長期に安定した不正・汚職のない政治情況を指し、「富強の中国こそ必ずや清廉な中国である」と付け加えることを忘れてはいなかった。

 以上の2冊の主張を重ねると、どうやら「中国の夢」とは、「大国に相応しい頭脳」に率いられた「アメリカを凌ぐ軍事力」に支えられた「世界第一の中国」の実現ということになりそうだ。


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