チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年4月6日

»著者プロフィール
閉じる

樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

「ほめ殺し」で日本の二の舞を踏むな

 同じ2011年出版の『中華大趨勢 中国拒絶捧殺』(舒秦峰著 中華工商聯合出版社)では、日本を例にして「中国が捧殺(ほめ殺し)を拒絶する」に至った理由を説く。

 「第二次大戦後、日本経済は猛烈な勢いで成長を遂げ、20数年足らずで廃墟の上に一大経済強国を作り上げた。当時の西側世界による日本への『捧殺』は現在の中国へのそれどころの騒ぎではなかった。1979年、アメリカ人学者のエズラ・ボーゲルが『ジャパン・アズNo.1』で日本は多くの部門でアメリカを超えたと指摘するや、10年ほどの間だが、日本は有頂天になり、この世の春を謳歌した。やがてバブル経済の破裂がキッカケで長期停滞に陥り、苦境に喘ぐ」と分析してみせる。

 そして、「中国モデルに対する高評価は、すでに国の内外でみられる流行であり、時代の潮流となった。〔中略〕中国が己を失って有頂天になるなら、本来進むべき方向を見失う。こうして“過度の評価”は“捧殺”に転ずる。誉め殺しに左右されることなく、潜心陶冶し、自らの脆弱性を克服してこそ真の大国となりうる。これこそが大勢の赴くべき当然の姿だ」――これが著者の基本姿勢だろう。

 日本人としては“痛いところ”を突かれた感もするが、「中国の夢」を実現するためには西側からの「捧殺」を拒絶する必要あり、との警句と受け止めることもできる。ということは、「中国の夢」は存外に「捧殺」に弱いのかもしれない。

関連記事

新着記事

»もっと見る