2022年12月10日(土)

WEDGE REPORT

2021年4月20日

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杉山和弘 (すぎやま・かずひろ)

オムディア・コンサルティングディレクター

1977年生まれ。2000年にNECに入社、10年ルネサスエレクトロニクスに転籍し、LSIの製品設計から事業戦略立案業務に従事。その後、IHSマーキットを経て、現在オムディア(OMDIA)のコンサルティングディレクターを務める。

業界の大勢は
「水平分業」に移行

 『Mac相場に異変 独自CPUが中古市場に余波』(1月23日付日本経済新聞)という記事が出た。アップルのノートパソコン「Mac」は、中古になっても値が下がらないことが常識だったが、値下がりが進んでいるという。なぜか。アップルがこれまでのインテル製のCPUから、「M1チップ」と呼ばれる独自のCPUを搭載したモデルを昨年11月に発売したからだ。ユーザーからは「処理速度が速く、バッテリーの持ちが良い」と称賛の声が上がっている。このM1チップは、半導体設計会社アームのモデルを基盤にしてアップルが独自に設計した。そして、生産したのがTSMCだ。

 TSMCは、半導体の製造設計を行うテキサス・インスツルメンツ出身の張忠謀氏が1987年に台湾で創業した。その後30年で世界市場の50%近くの半導体を生産するトップ企業となった。半導体の製造は、プロセスの進化とキャパシティを増やすために大規模な投資が必要になる。かつて「半導体大国」だった日本の企業も、投資合戦に敗れて多くが姿を消した。その一方で、投資リスクを減らすため、半導体の製造をやめ、設計に特化する企業も出てきた。その受け皿となったのが、TSMCなどのファウンドリだ。

 今や、量だけではなく技術においても、ファウンドリが最先端を走るようになった。特に7ナノ、5ナノなどの最先端プロセスは、TSMC、サムスン、2社しか生産できない。アップルをはじめとしたユーザーは、ファウンドリに日参して生産ラインを確保することに躍起になっているという状況だ。パソコンなど、かつてはインテルが主導して、インターフェイスなどが決められていたが、それがファウンドリに移行しつつある。

 長年インテルと熾烈な競争をしてきたアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も7ナノプロセス以降は、ファウンドリを米国のグローバル・ファウンダリーズからTSMCへ変更した。これによってパソコンのCPUでインテルのシェアを奪った。

 半導体メーカーのなかでこのような分業化が進む一方で、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったいわゆるGAFAは、その潤沢な自己資金によって、半導体の自社設計を加速させることが予想される。GAFAだけではなく、自動運転の実用化を目指す自動車メーカーも、自前で半導体設計を行う可能性が高い。そうなれば、ますますファウンドリの重要性は高まってくる。

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