2度の国難救われた日本
「自然の同盟関係」
昨年10月、菅義偉首相が就任後、初の外国訪問地としてベトナムを選んだ理由の1つは、今やベトナムが安全保障上、日本にとって最も信頼できる東アジアのパートナーになったことである。習近平体制の下、全体主義的傾向を強める中国は、南シナ海や東シナ海において国際法を無視して拡張主義的な動きを展開している。また、中国は嫌がらせや資金協力、ワクチン提供等を通じASEANの分断工作も進めているが、ベトナムはASEAN10カ国の中で対中警戒感を緩めず、厳しい対中姿勢を一貫して維持してきた唯一の国である。
日越両国は、航行の自由、法の支配、紛争の平和的解決、米軍のプレゼンスなどの戦略的利益を共有しており、「自然の同盟関係」にあるといえる。また、昨年10月時点で、日本で働く外国人労働者約172万人の内、ベトナム人は約44万人であり、中国人を抜いて初めて1位となった。ベトナムの若者達が人口減少と労働力不足に苦しむ日本を支えてくれている。
更に歴史を振り返ると日本はベトナムに2度助けられている。1度目は13世紀の「元寇」である。日本は「蒙古」の攻撃を2回受けたが、3回目はなかった。蒙古は再攻撃の準備を整えていたが、ベトナムの抵抗が強くなったことから、海軍を急遽南部へ派遣せざるを得なくなった。そして1288年、現在のハイフォン近郊の入り江(白藤江)で、チャン・フン・ダオ将軍の指揮の下、ベトナム軍が蒙古海軍をほぼ壊滅させた。その結果、3回目の日本攻撃はなくなったのである。ベトナムでは同将軍は「救国の神」として祀られている。
2度目は20世紀初頭の日露戦争時である。40隻からなる「バルチック艦隊」は、日本海海戦に臨む前に最後の寄港地としてベトナム中部の「カムラン湾」に寄港した。ベトナム人が補給などでサボタージュを図るとともに、燃料の石炭に泥を混ぜたことが、日本海海戦における日本勝利の一因であったとも言われている。当時、ベトナムはフランスの植民地であったが、独立運動が活発化しつつあった。
ベトナムは日本にとって歴史的な同盟国であり、国難を共に乗り越えた同士である。現在ともに東シナ海と南シナ海で中国の脅威に対峙している。中国は尖閣諸島だけでなく、沖縄も狙っているが、残念ながら日本国民の危機意識や国防意識は非常に弱い。今こそ日本は対中警戒感と主権や領土を守る覚悟をベトナムから学ぶべきだ。
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PART 2 人口減少 新型コロナが加速させた人口減少 〝成長神話〟をリセットせよ
PART 3 医療 「医療」から「介護」への転換期 〝高コスト体質〟からの脱却を
PART 4 少子化対策 「男性を家庭に返す」 これが日本の少子化対策の第一歩
PART 5 歴史 「人口減少悲観論」を乗り越え希望を持てる社会を描け
PART 6 制度改革 分水嶺に立つ社会保障制度 こうすれば甦る
Column 高齢者活躍 お金だけが支えじゃない 高齢者はもっと活躍できる
PART 7 国民理解 「国家 対 国民」の対立意識やめ真の社会保障を実現しよう
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