2022年12月5日(月)

Wedge REPORT

2021年5月10日

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〝言葉の暴力〟や〝見えない疎外感〟を受け、苦しむ

 ところが、このような暴論を向けられ、苦しんでいるのは池江選手だけではない。実を言えば、他の東京五輪日本代表、日本代表候補のアスリートたちも〝言葉の暴力〟や〝見えない疎外感〟を受け、人知れず苦しんでいる。ある団体競技の日本代表候補選手も「東京五輪を目指していることが、何か『罪』であるかのように思われるのは悲しい限りです。最近は自分についてネットやSNSに書き込まれるコメントがどうしても気になってしまう。

 つい先日も中には誹謗中傷に近い、乱暴な言葉で僕の名前を記しながら『〇〇は民意を無視し、自分のエゴだけで東京五輪に出るつもりなのか』『〇〇が出るのは勝手だが、日本代表ではなく非国民代表として参加しろ』などと書き込んできた人もいました。私は池江さんのように世間から注目を浴びるような選手ではなく発信力もないので実名を出す勇気はないですが…。それでもこれだけ苦しい境遇に追い込まれている事実は心の片隅にでも知っておいてもらいたいです」と寂しげな表情を浮かべ、現在の実情を切実に訴えていた。

 この代表候補選手以外にも多くの実例がある。たとえば最近耳にした中で、ひどい話だったのは某競技の日本代表選手の実子が学校でクラスメートから父親の東京五輪参加をめぐって「コロナなのにオリンピックなんて出ていいのかよ」とからかわれ、すっかり落ち込んでしまったというケースだ。他にも地方出身者の代表選手が、新型コロナに感染歴のある地元有力者から「コロナ感染の恐ろしさを共有できないままで『感染イベント』と目される五輪に出るなら、もう応援できない」と〝脅し〟をかけられ、今も関係はギクシャクしているという。

 「東京五輪の開幕に反対する声が強まり、アスリートに対する見方も微妙なものになっているのは残念ながら間違いないところ。それが証拠に本来ならば東京五輪が近付くにつれ、メディアでは日本代表選手に関する番組出演や出版ラッシュが続くはずだったが、現在までほとんどと言い切っていいほど行われていない。多くの有名な代表選手個々は大手出版社等と早々に契約を結んでいるが、激化する五輪開幕反対論に加えて参加するアスリートへの目も好意的ではなくなっていることで非常に発刊が難しくなっている。だから彼らは契約こそ結ばれているものの、宙ぶらりんのまま。最悪、実入りはほとんどない形で終わってしまうかもしれない」(出版関係者) 

 この場で東京五輪開催の有無について論じるつもりはない。ただ、何の罪もないアスリートたちを糾弾したり、非難の対象としたりするような愚行は絶対に間違っている。

  
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