2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2021年4月21日

 阪神が絶好調だ。20日も宿敵・巨人を敵地の東京ドームで下し、破竹の8連勝。貯金を12とし、セ・リーグ首位の座をガッチリとキープしている。まだ開幕から1か月足らずだが、ここまでの試合内容を見る限り「春の珍事」とは言わせないぐらいに投打もしっかりと噛み合っている。早くも5本塁打を放つなど活躍中のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明に触発されるように、チーム全体が活気付いていることも大きいのだろう。こうなると虎党としては2005年以来、遠ざかっている16年ぶりのリーグVをますます期待したくなるに違いない。

(ronniechua/gettyimages)

 ところが、時を同じくして阪神のお膝元・関西では不穏な空気が漂ってきた。大阪府が20日、大阪府庁で新型コロナウイルス対策本部会議を開催し、政府への緊急事態宣言の要請を決定。大阪では5日からまん延防止等重点措置が適用されて2週間以上が経過したものの感染拡大傾向は止まらず、20日も新規感染者数が火曜日としては過去最多となる1153人を記録して歯止めがかからなくなっている。

 同会議終了後に吉村洋文知事は宣言期間内のイベント開催を原則として中止もしくは延期させたい考えを示し、プロ野球やJリーグについて質問が及ぶと「国との協議の中で判断することになると思う」としながらも例外なく同様の姿勢を示した。大阪府内には京セラドーム大阪があり、当球場を本拠地としているオリックス・バファローズにとっては、まさに「寝耳に水」であろう。

 ただ、一方の阪神も対岸の火事ではない。兵庫県の井戸敏三知事が「必要があれば要請する」と述べ、緊急事態宣言の発令を政府に要請する方向で最終調整に入ったことを暗に示唆した。21日にも要請が正式決定するとみられ、歩調を合わせるとしている大阪府の方針にならうとすれば緊急事態宣言発令後のイベント開催に関しても〝大阪ルール〟が適用される可能性は高い。そうなると兵庫県内の甲子園球場を本拠地とする阪神も大きな打撃を受けることになる。

 大阪府の吉村知事はプロ野球やJリーグ等のプロスポーツ公式戦開催に関し「いろんな方法もある。無観客もあると思うし。現時点で無観客は考えてないという意見も出たり、確定ではない」とも述べ、無観客もしくは観客上限数の大幅な抑制による試合開催に一応の含みも持たせた。だが「今回の決定の主旨は人流抑制。そのときに大規模なスポーツイベントはそれにあてはまってくるので抑制していくべき」とも念を押し、宣言下における試合開催には断固たる姿勢を崩そうとはしなかった。

 阪神の球団内からは「万が一、宣言発令によって甲子園や(準フランチャイズの)京セラドームにおける試合開催の中止を自治体側に決められてしまったら、それこそレギュラーシーズンは必然的に中断せざるを得なくなるのではないか」と不安の声が沸き起こっている。これはもちろん、オリックスも同様だ。

 大阪府は今回政府に要請する緊急事態宣言の発令期間を「1カ月程度が適切」との見解を示しており、もしシーズン中断が現実化するとなればプロ野球界全体は大混乱に陥るだろう。Jリーグも関西圏内にホームスタジアムを置く大阪府のセレッソ大阪、ガンバ大阪、それに兵庫県のヴィッセル神戸と3つのJ1クラブがあるだけに、大阪府・吉村知事のイベントに対する〝中止か延期〟発言には関係者の間から戸惑いの声が漏れ伝わってくるのも無理はあるまい。

 NPB(日本野球機構)とJリーグは共同で定期的に隔週開催している新型コロナウイルス対策会議の場で試合開催については基本的に政府と自治体の判断に従う方針を示している。しかしながらNPB、Jリーグともに〝中止か延期〟は到底受け入れられるものではなく、無観客での試合開催にも「NO」の姿勢のようだ。

 実際のところ19日に行われた同会議後のオンライン会見でプロ野球の斉藤惇コミッショナーとJリーグ・村井満チェアマンは緊急事態宣言が再発令された場合でも、公式戦の無観客開催を回避したい意向を打ち出して吉村知事の発言を予見するかのように、あらかじめ牽制球を投げている。

 この場では斉藤コミッショナーが「我々から無観客でやりたいと発出することはない」と言葉に力を込めつつ「1年前と今と積み重ねたラーニング(知識)は違う。緊急事態宣言イコール無観客というジャッジは避けていただきたい」と注文をつければ、これにうなずくようにして村井満チェアマンも「お客様を迎えた試合は1000試合を超える。その中からクラスターは1件もなかった。昨年と同じく緊急事態だからイコール無観客という話ではない」と実例をまじえながら強い口調で訴えていた。


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