さすがに厳しい状況になってきた。メジャーリーグのタンパベイ・レイズに所属する筒香嘉智外野手が結果を出せず苦しみ続けている。2日(日本時間3日)現在、ここまで今季22試合に出場し、70打数11安打で通算打率は1割5分7厘、5打点、0本塁打と惨憺たる成績だ。
2日に本拠地トロピカーナフィールドで行われたヒューストン・アストロズ戦に「7番・一塁」でスタメン出場したが、3打数無安打1三振1四球。3点を追う5回の第2打席こそ四球を選び、オースティン・メドウズ外野手の同点3ランで本塁生還を果たしたものの、打撃の調子は相変わらず良くない。これで3つの四球を挟んでいるが6三振も含む18打席ノーヒット、4試合連続無安打と2日現在までの成績不振はかなり深刻だ。この日のアストロズ戦でチームは5-4で勝利し、連敗を3で止めたとはいえ、14勝15敗で借金1と悪戦苦闘中。大不振にあえぐ筒香が足を引っ張る形となっている。
近々なのか、それともまだ先になるのかは読めないが、どこかのタイミングで打棒の調子が今より多少なりとも上向きになることはあるだろう。それでも今後の筒香にMLBでのブレイクを期待する声は限りなく少ない。
MLB移籍1年目の昨季はコロナ禍のため開幕が遅れ、超変則の60試合制になった。だが開幕戦で3番・三塁でスタメン起用されるなど51試合に出場しながら打率1割9分7厘、8本塁打、24打点ではどれだけ大目に見ても「合格」とは言い難い。レイズと1年目で年俸500万ドル(約5億4600万円)、2年目で700万ドル(7億6500万円)の契約を結んでいる筒香はチーム内での年俸順位において昨季4位、今季2位とかなりの高額年俸選手となっている。
低予算で育成重視の基本スタンスを保つレイズの中で、費用対効果に見合わない筒香の存在は明らかに浮いている。この状況が続けば、まず周辺から断罪されるのも時間の問題だ。特にレイズの地元メディアは同地区のニューヨークと比べれば天と地ほどの差で〝スロースターター〟だが、一度火がつけばそれまでの静寂がウソのように凄まじいバッシングの嵐を浴びせ始める。そうなったら、レイズも筒香をかばえなくなってくるだろう。その兆候はすでに現れ始めており、地元紙タンパベイタイムズは先月17日に筒香のマイナー降格の可能性を報じている。
超低空飛行にもかかわらず筒香にチャンスが与えられ続けている理由には右ひざ手術を行った崔志万内野手が今季開幕から負傷者リスト入りしていることも大きく絡んでいる。筒香にとってポジション的にほぼ重なる崔は身内のライバル。だが昨年のポストシーズンでも筒香を差し置く形で出場機会を増やした崔の評価のほうが球団及びチーム内で高いことは、自明の理である。しかも、これだけ結果が悪いとなれば筒香は崔の戦列復帰と入れ替わるようにしてマイナーへの降格がいよいよ現実味を帯びてくることになるかもしれない。
レイズと同じア・リーグの極東担当スカウトは筒香の現況について「メジャーリーグで打者にとっては生命線となるムービングファストボールへの対応に未だ苦しんでいる。日本時代から筒香は速球への対応は苦慮していたところがあったが、基本的に失投や変化球を狙い、長打を量産していた。だが、この打撃スタイルではMLBで生き残っていけない。守備や走塁ではアピールできない筒香が彼のストロングポイントであるはずの打撃でチームの足を引っ張るとなると、レイズから契約途中でありながらも戦力として不要のレッテルを張り付けられる可能性も十分ある」と厳しい見解を示している。つまり今季は2年契約の最終年だが、成績不振によってシーズン途中に〝解雇〟されるのではないかとの懸念だ。
もちろん、レイズ側が筒香を「戦力にならない」と見切りを付ければ、まずメジャー他球団へのトレード等の道も模索することになるだろう。とはいえ、今の筒香を欲しがるMLBの他球団があるかと問われれば「?」を投げかけざるを得ない。前出のスカウトも「心苦しいが、ドラスティックな価値判断をするMLBで現状の筒香を獲得しようと名乗り出る球団は出てこないと予想される」と言い切っている。
レイズから「戦力外」と見切りをつけられることになったら、当然のように日本復帰も視野に入れなければならなくなる。奇しくも野球評論家の張本勲氏が日本時間の2日、レギュラー出演中のTBS系情報番組「サンデーモーニング」で不振の筒香について触れ、共演した元横浜DeNAベイスターズ監督の中畑清氏に「一番心配している筒香に電話して早く日本に帰ってこいと言ってくれよ」と日本復帰を促し、ネット上でも話題を呼んだ。