世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年5月27日

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 4月13日、米国の情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)は、米国の安全保障に対する世界的脅威に関して評価を行った年次報告書を発表した。それによると、米国にとって最大の脅威は、強大化する中国の存在であるとした。中国共産党が、世界的影響力を増大させるとともに、米国や米国の同盟・パートナー諸国の弱体化を図っていることを警告した。

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 例えば、核兵器については、中国は、「歴史上最も急速な拡張」で、核兵器を今後10年間で倍増する計画であると、「脅威評価」年次報告書は指摘している。

 すでに、中国は、米国内の目標を打撃できる「東風41」 というトラック積載の移動式ICBMを配備している。中国はまた、「東風26」という核兵器も通常兵器も搭載できる中距離移動式ミサイルを保有している。

 米国情報機関の「脅威評価」年次報告書を受け、ワシントン・ポスト紙コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスは、5月8日付の同紙に「ハルマゲドンの魔人が戻ってきたかも知れない」と題する論説を掲げ、中国との間で核兵器の軍備管理について話す必要があると主張している。その通りであろう。

 軍備管理について話すことは、お互いに相手の核兵器、その構成を知ることにつながり、また核兵器の使用についての予見可能性と安定性を作り出す効果がある。

 これは米ソ間でそうであった。核兵器が使えなくなる相互確証破壊(いわゆる MAD)状況を確実にすることが必要である。レーガン大統領が提唱したSDI(戦略防衛構想)は、この相互確証破壊状況を打破する提案であったが、これは相手の手持ちの核兵器を無力化するもので、無力化される前に使うということで核兵器の使用を誘発するものであった。核兵器を使うことを控えざるをえない状況を作ることが核兵器の安定性を保つことと米ソ間では理解されていた。防御と攻撃が適切に組み合わされることがこの関係で重要であった。核兵器の3本柱(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)のあり方も、核兵器の使用に安定性をもたらすことになる。

 核弾頭の削減や運搬手段の削減などは、中国が対米ロ核パリティを達成した後にしてもよいが、核兵器についての考え方(MADなど)を中国と共有し、どのような行為が核兵器の安定性を阻害するか、不安定化させるかなど認識と語彙を共有しておくことは必須である。

 核兵器の軍備管理は米ソ(現在は米露)間の問題であったが、今や、強大化する中国を核軍備管理のプロセスに取り込むことが必要である。中国に、限定的であっても、それに応じるように説得していく必要があると思われる。

  
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