オーストラリアの世代間格差
現在世代と将来世代の間には存在しない
次に、オーストラリアについて見てみる。推計時点は1995年、現在世代は1900年生まれ世代からはじまり、0歳世代は1995年生まれ、経済成長率は1.0%、割引率は5.0%というセッティングとなっている。こうした前提のもと、推計結果は図2の通りとなっている。
まず、現在世代の生涯純負担率の特徴を見ると、アメリカの場合と同様、(1)すべての世代でプラスとなっている、つまり純受益世代は存在しないこと(日本は85歳世代および90歳世代が純受益世代)、(2)最も生涯純負担率の低い1900年生まれ世代でも24.3%と日本のもっとも重い世代である0歳世代の16.3%を8%ポイント上回っていること、(3)1900年生まれ世代から1930年生まれ世代にかけて上昇して以降、生涯純負担率は各世代で横ばいとなっていること、(4)1930年代生まれ以降の現在世代内では世代間均衡がほぼ達成されていること、が指摘できる。
次に、現在世代と将来世代の間の格差を見ると、将来世代の生涯純負担率は37.0%となっており、0歳世代の37.1%とほぼ同一の水準であることが分かる。
これは、1995年の推計時点での評価であり、今現在は不明であることに留意する必要はあるものの、オーストラリアでは、日本とアメリカで見られたような現在世代と将来世代の間には格差は存在しない。
日本の現在世代の生涯純負担率は低い
このように、日本の世代間格差の特徴とアメリカとオーストラリアのそれとの比較からは、日本はすべての現在世代で純負担が小さく、その結果として、将来世代に多くの負担を押し付けていると言える。また、生涯純負担率で測った世代間格差の形状はアメリカのそれに酷似している。
将来世代の利益保護
このように、日本においては、世代間の受益負担構造の歪みはオーストラリアとは異なり、すべて将来世代が負わされている。言うまでもなく、将来世代は選挙権を持たず(そもそもまだ実在していない)、自らの意見を表明する機会を与えられてはいない。
こうした場合、将来世代の利益保護はどのように担保されるのだろうか。