したがって、この法の下の平等から直ちに、現在の国民と、現在の年少世代やその子供たちとの間にある経済的不平等の完全な解消を要求する根拠が得られるわけではもちろんないものの、現在世代と将来世代の世代間格差が「合理的な取り扱い上の違い」から生じたものでない場合には、憲法の趣旨に反するものとみなされる可能性が高くなるだろう。
私見ではあるが、こうした憲法上の規定から解釈すると、将来世代をめぐる格差の現状は違憲状態にあると言っても過言ではないだろう。ベルギーの政治哲学者Axel Gosseries教授の研究によると、憲法の中に将来世代の権利を謳っているのは、ノルウェーとボリビアと日本の3カ国しかなく、しかも日本が一番古い。日本国憲法の将来世代に関する規定を有名無実とするかいなかはわれわれ現在世代の覚悟と行動にかかっている。
長寿化は悪ではない
制度改革で世代間格差の是正を
日本を含む先進国では高齢化が進行している。いうまでもなく、長寿は人類の長年の夢であった。この人類が求め続けた夢を日本は前世紀後半に実現したのだが、最近では「高齢化問題」と呼ばれるように、まるで長生きが悪いことであるかのようだ。
しかし、もちろん、高齢化自体が問題なのではない。そうではなく、高齢になるほどコストが高くなり、さらにそのコスト負担のあり方を曖昧にしている公的な諸制度の存在が、個人そして経済全体に過重な負荷を与えているのだ。繰り返しになるが、長寿化は悪ではない。
したがって、せっかく日本人が手に入れた長寿を最大限享受するためには、こうした高齢者の高コスト構造をもたらす制度を変革する必要がある。そしてそれは同時に世代間格差を是正することにもつながるだろう。
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