中東を読み解く

2021年5月31日

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一段と困難になったパレスチナ和平

 ネタニヤフ氏はそもそも、5月のパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの戦闘を政治的な浮揚策として利用しようと図った。だが、その思惑とは裏腹に、バイデン米政権の介入で戦闘を11日間で停戦せざるを得なかった。ガザからイスラエルに向けて4000発を超えるロケット弾が発射されたが、ハマスが保有するロケット弾の相当数はまだ無傷のままと見られている。

 国民の多くはネタニヤフ政権がロケット弾の引き渡しなどの条件付きではなく、無条件で停戦したことを批判している。世論調査によると、実に72%が停戦に反対、67%が3年以内に再び戦闘が起きると考えており、今回の戦争はネタニヤフ氏の政治的狙いとは逆に、不利に働いた。

 だが、パレスチナ側にとってはネタニヤフ政権が交代したとしても、和平交渉は進みそうもない。一段と状況が悪化する懸念さえある。というのも、新政権で最初の首相を務めるベネット氏はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸への入植推進の指導者だった経歴を持つ愛国者で、パレスチナ独立国家の反対論者であるからだ。イスラエル軍特殊部隊の出身の元軍人でもある。

 自らの支持者であるユダヤ教右派などからの圧力もあり、和平交渉で歩み寄りを期待するのは難しいだろう。バイデン政権はこのほど、トランプ前政権が閉鎖していた東エルサレムの米領事館の再開を決定した。同領事館は事実上、パレスチナ側との窓口になっていた施設で、バイデン政権が中東和平の調停にやっと本腰を入れ始めたと見られていたが、新政権の登場は和平交渉を複雑に、困難なものにするかもしれない。

  
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