サイバー攻撃の「負の波及効果」
米石油パイプライン企業コロニアル・パイプラインが5月、ロシアのハッカー集団「ダークサイド(DarkSide)」によるランサムウエア(身代金要求型ウイルス)を使用したサイバー攻撃に遭い、業務停止を余儀なくされました。
その結果、米国内では一部のガソリンスタンドが営業できなくなり、ガソリンが不足して高騰し、社会に混乱が生じました。この件に関して、バイデン氏は「ロシア政府の関与の証拠はないが、何らかの責任はある」と述べました。
さらに、ブラジルの世界最大手の食肉加工メーカーJBSの米国、カナダ及びオーストラリアの食肉処理工場が5月31日、サイバー攻撃を受けてラインが停止に追い込まれました。米連邦捜査局(FBI)は、ロシアのハッカー集団「リービル(REvil)と「ソディノキビ(Sodinokibi)」による犯行と断定しました。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は6月2日の定例記者会見で、選択肢の一つに報復があることを明かしました。
国民生活と直結しているガソリン価格の高騰が続く中、バイデン氏の支持率が下がりました。ロイター通信とグルーバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスの共同世論調査(21年5月26~27日実施)によれば、バイデン氏の支持率は52%で、前回の同調査(同月19~20日実施)と比較すると、4ポイント低下しました。一方不支持率は44%で、逆に5ポイント上昇しました。
ロシアのハッカー集団の目的は身代金の獲得ですが、彼等が仕掛けたサイバー攻撃は、米国社会に混乱を招き、バイデン氏の支持率を低下させ、「負の波及効果」をもたらしました。