今回のテーマは、「米ロ首脳会談とサイバー攻撃 バイデンはプーチンにどう立ち向かうのか?」です。米ロ首脳会談が6月16日、スイスのジュネーブで開催されることになりました。
ジョー・バイデン米大統領はなぜこのタイミングでロシアのウラジミール・プーチン大統領と首脳会談をする必要があるのでしょうか。どうしてプーチン氏はハッカー集団による米国へのサイバー攻撃を止めないのでしょうか。また、バイデン氏はプーチン氏をどのように捉えているのでしょうか。本稿では米ロ首脳会談に焦点を当てます。
なぜバイデンは「殺人者」と会うのか?
保守系の米FOXニュース元司会者ビル・オライリー氏が2017年、ドナルド・トランプ前大統領にインタビューを行いました。トランプ氏が「私は彼(プーチン氏)を尊敬している」と語ると、オライリー氏が「プーチンは殺人者だ」と指摘したのです。すかさずトランプ氏は「殺人者はたくさんいる。あなたはこの国(米国)が無罪だと思っているのか」と反論しました。愛国者のはずのトランプ氏がプーチン氏を擁護して、米国を非難したのです。
バイデン大統領は3月、米ABCニュースとのインタビューでオライリー氏と同様、プーチン氏を「殺人者」と呼びました。バイデン氏は5月28日、南部バージニア州での演説で「自分は本心を語ってしまうので、時々非難される」と述べました。ということは、プーチン氏を心の底から殺人者と思っているのでしょう。
では、バイデン氏はどうして「殺人者」に会う必要があるのでしょうか。
バイデン大統領は5月30日、地元デラウェア州で演説を行い、米ロ首脳会談でプーチン大統領に「人権侵害を容認しないことを明確に伝える」と主張しました。ロシア反体制派の政治指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏及び、ベラルーシ反体制派のジャーナリストロマン・プロタセヴィッチ氏と交際相手の拘束を「人権侵害」として会談で取り上げ、彼らの解放を要求するからです。プーチン氏はベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領を支持しています。
加えて、バイデン氏はロシアによる米政府及び企業を標的にしたサーバー攻撃に関しても、プーチン大統領に対面で抗議する必要があるからです。米公共ラジオ(NPR)は米国国際開発庁(USAID)がロシアからサイバー攻撃を受けたと報道しました。なぜ同庁を標的にしたのでしょうか。
米国国際開発庁は経済支援などを通じて世界に民主主義を広げて、人権擁護に取り組んでいるからでしょう。ロシアは民主主義及び人権を内政と外交の柱としているバイデン大統領に挑戦状を叩きつけたのです。