海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「見えてきた『バイデン・ドクトリン』の本質」です。イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスとの停戦合意のプロセス及び、新たな対北朝鮮政策を分析すると、ジョー・バイデン米大統領の外交における「バイデン・ドクトリン(基本原則)」がみえてきます。

 「バイデン・ドクトリン」には、どのような特徴があるのでしょうか。本稿では、停戦合意と対北朝鮮政策からバイデン・ドクトリンの本質に迫ります。

(Bet_Noire/gettyimages)

「静かな集中的外交」の勝利

 バイデン大統領やアントニー・ブリンケン米国務長官及びホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争がわずか11日で停戦合意に至った理由は、「静かな集中的外交(quiet, intensive diplomacy)」にあるという見解を示しました。特に、サキ報道官はホワイトハウスでの定例記者会見で、2014年の「ガザ紛争」では停戦までに51日間費やしたのにもかかわらず、今回は11日間で紛争を終息させたと繰り返し強調しました。

 バイデン氏は、外交交渉は水面下で静的に行う方が効果的であると信じています。一方ドナルド・トランプ前大統領は動的で、外交交渉を「政治ショー」として扱い、映像を通じて自己PRをしました。バイデン・トランプ両氏の外交は極めて対照的で、「分かりにくい外交」と「分かりやすい外交」ないし「退屈な外交」と「楽しい外交」に分類できるかもしれません。

 サキ報道官はバイデン政権が関係国と80回以上も対面会談と電話会談を行ったと、記者団に明かしました。加えて、バイデン氏がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と11日間で6回も会談をしたと述べました。バイデン政権は短期間で集中的に外交を展開したと言いたかったのでしょう。「静かな集中的外交」により、バイデン氏は政権発足後初めての外交危機を乗り切りました。

 「静かな集中的外交」はバイデン外交の真髄といえます。

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