「関与」と「制裁」の調整
新たな北朝鮮政策にも「バイデン・ドクトリン」が透けて見えます。バイデン政権は北朝鮮に対するアプローチを「調整された実用的アプローチ(calibrated practical approach)」と呼んでいます。
では、なぜ「calibrate(調整する)」という言葉を選択したのでしょうか。その意図はどこにあるのでしょうか。また、「calibrate」にはバイデン氏やブリンケン氏及びジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のどのような思いが込められているのでしょうか。
「calibrate」には「adjust」とは若干異なり、「正確」並びに「精密」の意味が込められています。「calibrate」は「正確に測る」「厳密に測定する」という意味で用いられます。つまり、バイデン政権は、トランプ前大統領の対北朝鮮政策が「正確性」及び「精密さ」に欠けていたとみているフシが強いです。
次に、「calibrate」には「外的要因を考慮に入れるために調整を行う」という意味があります。ということは、バイデン政権は何を外的要因として捉え、北朝鮮の非核化を目指して調整しようとしているのでしょうか。
北朝鮮における人権侵害を外的要因に取り上げて、同国に対する「関与」と「制裁」の割合を調整している公算があります。常識的に考えれば、人権侵害行為の程度によって、制裁の割合が決まります。
例えば、「関与」と「制裁」の割合が6対4であったとしましょう。しかし、人権侵害行為が高まれば、その割合は4対6に逆転します。バイデン政権では対北朝鮮政策において人権侵害は重要な要因になることは確かです。従って、バイデン大統領が指名する可能性が高い北朝鮮人権特使に注目が集まります。