「個人的関係」から「中味重視」へ
「実用的アプローチ」についても考えてみましょう。「practical(実用的)」なアプローチは、理論やアイデアよりも、実際的な側面を重視します。オバマ元政権の「忍耐的戦略」は理論的であり、実際的であるとは到底言えません。
一方、トランプ前政権による北朝鮮の「完全な非核化」と「全面的制裁解除」の「大きな取引(ビック・ディール)」も、現実的ではないと、バイデン政権は捉えているとみてよいでしょう。となると、「小さな取引(スモール・ディール)」の積み重ねによる段階的非核化を目指していると解釈できます。
バイデン政権はトランプ氏が重視した金正恩朝鮮労働党総書記との「個人的関係」の構築による核・ミサイル問題解決は非現実的であり、「中味重視」のアプローチがより実際的であるとみています。つまり、「蜜月」よりも「中味」に焦点を当てたアプローチをとるでしょう。
ただ、バイデン政権は北朝鮮の非核化は、過去4代の政権で達成できなかった最も困難な問題と捉えているのも事実です。同政権にとって「難易度」が極めて高く、「緊急性」が低い問題である訳です。しかも、トランプ氏には北朝鮮問題を「政治的な得点稼ぎ」に利用する高い意欲がありましたが、バイデン氏には殆どないとみて間違いありません。
バイデン政権の対北朝鮮政策における「個人的関係」から「中味重視」への大転換も、「バイデン・ドクトリン」の一要素として看過できません。
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