プーチンに強気のバイデン
首脳会談ではロシア政府による米大統領選挙介入の問題においても、バイデン・プーチン両氏の議論がヒートアップすることは間違いありません。両氏はこの問題についても一歩も引かないでしょう。
米国の全ての情報機関は16年米大統領選挙で、ロシア政府が選挙介入をして、民主党本部並びにクリントン陣営幹部のコンピューターをハッキングしたと結論づけました。ロシア政府が盗んだジョン・ポデスタ選対委員長(当時)の流出メールは、内部告発サイト「ウィキリークス」を通じて公表されました。ロシア政府はヒラリー・クリントン候補(当時)に関する大量の誤情報もネット上で拡散しました。ロシア政府のハッキングが選挙でトランプ氏に有利に働いたとみられています。
トランプ前大統領は18年フィンランドのヘルシンキで開催された米ロ首脳会談で、ロシア政府による選挙介入についてプーチン大統領を厳しく追及しませんでした。自国の情報機関の報告ではなく、「ロシア政府による選挙介入はなかった」というプーチン氏の言葉を信じたのです。米情報機関によれば、20年米大統領選挙においても、ロシア政府はトランプ氏再選を助けようとしました。
米ソ冷戦時代を経験した反ロシアの共和党保守派は、トランプ氏のプーチン寄りの姿勢に強い不満を抱いていました。20年米大統領選挙でバイデン大統領は彼等から支持を得ました。従って、首脳会談でバイデン氏
続く「予想不可能で不安定」な関係
さらに、バイデン大統領はロシアから民主主義を守り抜くという強い決意で臨むでしょう。演説の中で「民主主義が独裁主義よりも優れていることを証明しなければならない」と、繰り返し述べています。バイデン氏は民主主義が独裁主義に押され、危機的状況に陥っていると強く認識しているからです。
バイデン大統領にとって、ロシア政府の選挙介入は明白な独裁主義国による民主主義への破壊行為です。バイデン氏の目にはプーチン大統領は「殺人者」「人権侵害者」及び「民主主義の破壊者」に映っています。余談ですが、おそらくバイデン氏は安倍晋三前首相とプーチン氏の関係に不快感を抱いていたでしょう。
今回の首脳会談で、米ロ関係が一気に予測可能で安定的なものになる可能性は、かなり低いとみてよいでしょう。バイデン・プーチン両氏が人権、サイバー攻撃及び選挙介入で激論になれば、逆に両国の関係は予測不可能で不安定さを増す公算が高まります。
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