2024年4月20日(土)

Washington Files

2021年7月2日

さまざまな疑惑

 トランプ氏が直接関与してきた事業に関してはこれまで、さまざまな疑惑が伝えられてきた。その中には以下のようなものがある:

  • 2016年大統領選に立候補したトランプ氏は、共和党陣営が全国から集めた選挙資金の中から、少なくとも820万ドル以上を「諸経費」として一族が所有する関連会社に振り込ませた
  • ニューヨーク検事総長は昨年8月、トランプ氏が同州ウェストチェスター郡セブンスプリングズの大規模遊休地、シカゴのトランプ・インタナショナル・ホテル売買などに際し、銀行融資を受けやすくするため時価相場を故意に吊り上げ、売却の際には収益を少なく見せるため評価額を操作してきた疑いなどで捜査に乗り出した。その後、今年に入り、刑事事件捜査に切り替えられた
  • 事業経営者養成を目的としてトランプ氏が設立した「トランプ大学」について、当初入学案内に盛り込まれた授業内容と運営実態が大きく異なっていたため、多くの学生たちが民事訴訟を起こし、最終的にトランプ氏側が、賠償金2500万ドルを支払い決着した
  • 2018年、トランプ氏が管理する慈善事業組織について、集まった資金のうち、慈善目的以外に流用したとして告発を受け、ニューヨーク州地裁が同氏に対し、200万ドルの罰金支払いを命じた

 しかし、大統領在任中に国民の最大の関心事となったのは、トランプ氏の過去の納税実態を暴いたニューヨーク・タイムズ紙によるスクープ記事だった。

 同紙が昨年9月27日付で報じた内容によると、①大統領は2016年および2017年両年度、それぞれ750ドルしか所得税を納めていなかった②過去18年間にわたり、合計9500万ドルの所得税を納税したが、その後「企業損失」などを理由に7290万ドルの還付を受けた③過去15年のうち10年分については、損失が収益をはるかに上回ったとして所得税を全く納めなかった④2016年、新設オープンしたばかりの首都ワシントンの「トランプ・インタナショナル・ホテル」経営でも、5500万ドルの赤字税申告を行った―などの点が明らかにされた。

 マンハッタン地検は、こうした不明朗な納税実態についても、捜査を続けてきており、すでに今年2月、連邦最高裁による最終裁可を下に、過去8年間分のトランプ氏個人所得納税関係書類一式を入手したことを公表している。ニューヨーク・タイムズ紙によると、最高裁は、同地検に対し、納税関連書類とは別に、「トランプ・オーガニゼーション」本社の膨大な経理関係書類の押収を認めたことから、捜査は税処理疑惑だけにとどまらず、経営全体を俯瞰する大掛かりなものに発展する可能性もある。


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