Washington Files

2021年7月2日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ前大統領の不動産関連疑惑を捜査してきたニューヨーク・マンハッタン地検は1日、同氏が所有する「トランプ・オーガニゼーション」本社と同社最高財務責任者のアレン・ウィーゼルバーグ氏(73)を正式起訴した。今後、捜査の手がどこまで伸びるかに注目が集まっている。

1日、マンハッタン地検に出頭したウイーゼルバーグ氏(代表撮影/ロイター/アフロ)

 起訴されたウイーゼルバーグ氏は1日早朝、弁護士に伴われ、マンハッタン地検に出頭した。 1日までに明らかにされたところによると、今回起訴の直接容疑は、同社の「給与外利益」を対象とする脱税をめぐるもので、トランプ氏本人は対象となっていない。しかし、マンハッタン地検の元検事でペース大学法学部教授を務めるベネット・ガーシュマン氏は、電子メディア「The Hill」に対し、「トランプ氏は間違いなく今回の問題に関わっており、後日、起訴されることもあり得る」とコメントしている。

 ウォールストリート・ジャーナル紙も「大統領在任中及びその後も、幾多の刑事・民事追求をそのたびに交わしてきたトランプ氏にとって、今回は初めての起訴案件であり、打撃になることは避けられない」と伝えた。 

 一方、トランプ氏は前日30日、ワシントン・ポスト紙がいち早く「起訴」決定を報じたのを受け、FoxNews番組の中で「自分に関わる一連の捜査や連邦議会における弾劾審議を含めすべてナンセンスきわまりない。今回はニューヨークのラジカルな左翼検事が攻撃を仕掛けてきたものであり、断固戦わなければならない」などと猛反発の構えを見せた。

 ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルのほか主要各紙が一斉に報じたところによると、マンハッタン地検は、トランプ氏が大統領在任中の2018年当時から、「トランプ・オーガニゼーション」のオーナーである同氏による税務内容疑惑に目をつけ、周辺捜査を進めてきた。しかし、現職大統領は刑事訴追対象外とされていることなどから、その後捜査は立ち往生状態だった。

 局面が大きく動き始めたのは、トランプ氏が昨年11月大統領選で敗退、去る1月20日、ホワイトハウスを離れてからだった。同地検はただちに、トランプ氏の最側近で30年近くにわたり、「トランプ・オーガニゼーッション」の“金庫番”を務めてきたウイーゼルバーグ氏が疑惑全容解明の重要なカギを握るとみて、親族関係の事情聴取に着手してきた。並行して同氏個人の過去何年にもわたる納税申告書類もすでに押収された。

 その過程で具体的に浮かび上がってきたのが、ウイーゼルバーグ氏の子息および家族が同社で雇用されている間に、運転手付き私用車の賦与、私立学校入学金・授業料の肩代わり、豪華アパート提供など、会社側から受けてきた給与以外の多額の便宜提供にからむ脱税疑惑だった。この関連ですでに、子息の元夫人が地検の事情聴取で容疑内容をほぼ認めているという。

 このため、同地検はとりあえず、「トランプ・オーガニゼーション」経営実態に精通したウイーゼルバーグ氏を起訴後、本格追及の過程で、司法取引などの可能性をちらつかせ、結果的に同氏から核心に迫る供述を得たい考えだと伝えられる。

 この点に関連し、何人かのマンハッタン地検検事経験者は、ウォールストリート・ジャーナル紙に対し「今回の起訴内容は、(トランプ氏起訴を含む)将来の一連の起訴容疑につながり得る。とくに、今後、ウイーゼルバーグ氏からの捜査協力が得られることになった場合、なおさらだ」「捜査対象人物が、刑事訴追容疑をかけられるまで、捜査協力を拒み続けることは珍しいことではない。しかし、いったん起訴された場合、当該人物は裁判で徹底的に争うか、有罪を認めて捜査協力するかの選択を迫られることになる。多くの場合、裁判の結果、刑期言い渡しになるのを回避するため、捜査協力の道を選ぶことになる」などと論評している。

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