Washington Files

2021年6月14日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 今年のG7サミットでは、価値観を異にする中露を意識した「民主主義国の結束」が最大課題となった。しかし、その両国は、バイデン米政権発足に合わせるかのように最近、軍事面での協力関係を一段と加速させている。アメリカの安全保障専門家たちも、対立の激化に神経をとがらせ始めている。

(masterSergeant/gettyimages)

 「われわれは、中国およびロシア政府の『有害な諸活動harmful activities』に立ち向かうため西側民主主義諸国の結束を促す用意がある」―バイデン大統領は、英南西部のコーンウォールで開催された先進7か国首脳会議出席に先立ち、去る10日、米ワシントン・ポスト紙への特別寄稿文の中でこう力説した。

 しかし、皮肉にも、アメリカが旗振り役となったこうした対抗姿勢は、中露両国を同盟関係にまで追い込むことにもなりかねず、問題の複雑さを暗示している。

 冷戦終結後、中ソ両国は、「一極支配」の様相を呈しつつあったアメリカに対抗するため、戦略面での相互協力を模索してきた。

 それまで中国とソ連(当時)は、イデオロギー論争、国境紛争などを通じ対立色を濃厚にしてきたが、ソ連崩壊後、ロシアに変わってからは、2001年6月、中央アジアにおけるアメリカの影響力拡大阻止を目的とした「上海協力機構」への共同署名、同年7月、「中露善隣友好協力条約」調印、2004年、両国武力衝突の原因となってきた国境問題処理と経済・エネルギー協力拡大、など相次いで合意にこぎつけてきた。

 そしてとくに、プーチン専制体制が確立された2010年代に入ってからのロシアは、対中傾斜を一気に鮮明にし始めた。

 2012年5月、プーチン大統領がワシントン近郊のキャンプデービッドで開催されたG8サミットをあえてすっぽかし、代わって同時期に北京で行われた「上海協力機構」会議の場で、アメリカの「際限ないミサイル防衛計画」を厳しく非難したことは、その象徴的動きとも言えた。

 これを受け、翌2013年3月、国家主席に就任したばかりの習近平氏も真っ先にモスクワを訪問、両首脳による「包括的戦略的協力パートナーシップを優先課題とする」との共同声明発表にまでこぎつけている。

 さらに2014年には、ロシアによるウクライナ・クリミヤ半島武力併合に米欧諸国が一斉に反発、対ロ経済制裁に踏み出したことをきっかけに、中ロ関係は一段と緊密化に向け拍車がかかった。

 とくに両国は2014年以後、軍事面での連携強化が加速している。目立った動きとして、以下のようなものがある。

  • ロシアは、2014-2018年にかけて、中国人民解放軍向けに高性能を誇るS-27型およびS-35型戦闘機のほか、S-300、S-400対空システム、最新鋭対艦ミサイルなどを次々に供与、その結果、中国にとって、ロシアからの武器調達規模は全体の7割近くにも達し、台湾海峡、南シナ海における米軍対空優位性を崩すだけの能力を保持するに至った。
  • 両国は2014年以来、産軍協力面でも相互に補完し合う動きが活発化しており、とくにロシアは、経済制裁により、西側諸国からの高度軍事技術アクセスを絶たれた穴埋めとして、中国製のエレクトロニクス製品、海軍用ディーゼル・エンジンなど調達に踏み切った。
  • 軍事演習面でも、2005年に、両国最初の地上軍、空軍による合同演習「Peace Mission 2005」をスタートさせたのを皮切りに、その後、2012年以後は、毎年恒例化した海軍合同演習へと広がりを見せてきた。とくに数年前からこの海軍演習は、地中海から南シナ海海域にまで幅広い海域に及んでいる。
  • 2016年、中ロ両国作戦司令部は、ミサイル防衛、内乱鎮圧などを目的としたコンピューターによる合同シミュレーション作戦を展開、続いて2018年、2019年にはロシア軍の「戦略司令部参謀演習strategic command-staff exercise」に人民解放軍幹部も参加したことも明らかにされた。
  • 2019年8月には、両国の戦略爆撃機がインド太平洋海域上空で初めて合同演習を行った。同海域でのプレゼンスを高めつつある米軍を意識し、その動向が両国にとって共通の「重大関心事」であることをアピールする示威行動と受け止められている。

 さらに、バイデン政権発足以来、米国防関係者たちが大きな関心を示しているのが、ロシア、中国が今年に入り、ほぼ時期を同じくして、戦力展開面で目立った動きを見せている点だ。

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