あるオバマ陣営幹部はこう言う。「自然災害としてのカトリーナはブッシュのせいではないし、対応の不手際はブッシュ政権の能力の低さではない。問題はブッシュ政権が連邦政府の役割や力を信じていなかったからだ」。ここで「ブッシュの影」と「政府の役割の意義」が、ハリケーンを媒介に繋がったことは否定できない。
しかし、それでも「ハリケーンでロムニーが負けた」というのは誇張であると民主党側は見ている。「ニューヨークタイムズ」ではネイト・シルバーが「オバマの好調はハリケーン前からだった」と記しているが(New York Times, November 10, 2012)、前述ローゼンバーグも同様の立場で、「ハリケーンの発生そのものではなく、2つの陣営が危機にどう対処したかが、ハリケーン・サンディのインパクトになる」と選挙前から予測していた。
つまり、総括すればハリケーンが結果に影響を与えたことでは両党の見方は一致している。しかし、共和党が「自然災害でオバマはアクシデントで再選されただけだ」という見方なのに対して、民主党は「オバマ政権のハリケーンのハンドリングが優れており、ロムニー側はむしろ自然災害への意識が低過ぎた」と見ている。
結果として言えるのは、「2008年選挙モデル」をめぐる論争にしても、「ハリケーン」論争にしても、1つの同じ現象をどのように解釈するか、意味付けするか、エクスキューズにするかで、党派的な立場にかなりの乖離がある現実である。
2008年選挙は「アフリカ系の大統領を誕生させる」例外的な選挙であった。他方で、組織形成や支持基盤動員では、民主党が2008年からさらに進化している事情も、オバマ陣営の戦略と2012年の結果から窺える。人口動態や人々の政治意識の変容とも無縁ではない。
そして明記しておきたいのは、一般投票では3%程度の差しかない相当な接戦だったことだ。選挙人で100人ほどの差をつけて圧勝したかに見えるオバマも、票の実数では辛勝だった現実が重くのしかかる。人口動態の変化が示唆する問題、オバマ2期目については別稿に譲る。
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