WEDGE REPORT

2021年7月20日

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空コンテナの解消に挑む
日本のシニア起業家

 コロナ禍で欧米にコンテナが滞留したように、コンテナの偏在という問題もある。下表にあるようにアジアからの輸出超過となっている。

(出典)IHS Markit GTA Forecasting (出所)日本海事センター (注)単位=万TEU写真を拡大

 このため「全体の4割程度を空コンテナとして運んでいる」(業界関係者)という非効率な状況が生まれている。

 この「空コンテナ」問題に取り組むシニア起業家が日本にいる。18年に創業したボクスティクス(BOXTICS、東京都港区)技術本部長(CTO)の星野雄司氏は、長年トヨタ自動車で生産技術開発を担当してきた。タイ・トヨタの副社長を務めた後、日本に転勤となるタイミングで、ボクスティクスに参画した。56歳で迎えた大きな転機だ。三井物産出身で創業者の池田夏雄氏とは、新人時代に知り合いになってから30年来の付き合いだ。

 ボクスティクスのコンセプトはシンプルだ。ワンタッチでコンテナを折りたたむことで使用するスペースを3分の1にする。「折りたたむ」というコンセプト自体はすでに欧州で実用化されている。ただ、コンテナ上部を重機で釣り上げたうえで、作業員2人が、両面の側壁のレバーを引いて折りたたむというもので、手間もかかり、危険度の高い作業となる。

 これに対してボクスティクスは、コンテナをたたむための駆動源として機械メーカー椿本チエイン(大阪市北区)が開発したジップチェーンの新機構を使うことでコンテナの折りたたみをスムーズに行う構造となっており、特許も取得済みだ。さらに、コンテナそのものについても大手物流企業で、コンテナの設計を担当していた経験者と共に、新しく設計を進めている。

「スタートアップといえば、〝若者〟というイメージを持たれることが多いが、我々のような〝オヤジ〟には経験と人脈という武器がある」(星野氏)と、まさにその武器をフル活用している。

 ただ、ハードルは高い。そもそも2万個にも及ぶコンテナを効率的にどうやって集めるのか。一定程度のボリュームがそろわないと、折りたたむメリットが出てこない。前出の柴崎准教授らの試算によると3~4割程度の普及が必要になってくるという。それでも「来年には試作品を出したい」(星野氏)と、怯むつもりはない。

 足もとのコンテナ物流は予断を許さない状況が続く。日ごろ当たり前にある物資がなくなれば、それこそ影響が大きい。特に、多くを海上輸送に頼る日本にとっては深刻な問題だ。安定的な物流の確保に向け、さらなるブレークスルーが求められている。

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