2024年5月21日(火)

足立倫行のプレミアムエッセイ

2021年7月31日

オリンピックの後の手のひら返し

 7月になって突然、私の(極端に短い)スポーツ人生の頂点の時期がやってきた。川崎市の高校柔道大会の白帯クラスに出場して、9人抜きを達成したのだ(第2位)。私の次の次に登場した生徒が11人抜きをやっていなければ、第1位のはず。スポーツは「たられば」の世界と、当時の私は思った。

 それにしても残念なのは、私がもっとも輝いたその日のことを(数人の部員を除き)町道場の娘さんも、クラスの友人たちや女子たちも、誰一人知らないことだった。私は8月に東京の講道館に行き、審査を受けて初段になった。念願の黒帯、ようやく柔道部部長としての体面を保ったわけである。

 もっとも、東京オリンピックが終わってしまうと、あれほど盛り上がっていた国内のスポーツ熱は、それまでの熱狂が嘘のように、急速にしぼみ始めた。

「おい、お前、第一志望の大学はどこ? 私立?国立?」

 級友たちは、早くも大学進学の話題で持ちきりだった。私は毎週体育館の青畳に通っていたけれど、来春のいつごろ部長の座を後輩に譲るべきか、進学自体よりもそのことに頭がいっぱいだった。

 57年後の2度目の東京オリンピック。今回の五輪後には、どんな手のひら返しが起こるのだろうか。連日、競技のテレビ中継を眺めながら、そんなことをぼんやり考えている。今回の開会式の、57年ぶりのブルーインパルスの五輪マークは、大量の雲のせいでどこからも「完全なかたち」では見ることができなかったのだが…。

  
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