2024年4月26日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2021年7月9日

『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』

 縄文時代の土偶といえば、両目が吊り上がり腰が巨大な「縄文のビーナス」にしろ、宇宙人のような両目の遮光器土偶にしろ、奇妙奇天烈な形が多く、何を意味しているのかよくわからない。

 教科書などでは妊娠女性説、地母神説、デフォルメした人体説などが紹介されているが、明治時代に土偶研究が始まって130年以上、いまだに「定説」のない古代史の謎なのだ。

 その領域に今回、『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』(晶文社)人類学者の竹倉史人さんが画期的な「新説」を引っ下げて登場した。

「最初のページの第1行目が、“ついに土偶の正体を解明しました”ですね。それに続き“(土偶は)〈植物〉の姿をかたどっている”とすぐに結論も示しています。初手からかなりハイテンションでは?(笑)」(足立)

 本書で竹倉さんは、縄文中期以降に出現した大量の土偶は、「食用植物や貝類をかたどったフィギュア」であるとして、「縄文のビーナス」や遮光器土偶など9つの様式を順番に紹介し、解明・解説している。

「定説のない土偶問題に一石を投じようと思ったわけです。そのために、あえて論議を呼びそうな書き方をしました」(竹倉)

 これまで土偶問題を最前線で扱ってきたのは考古学。人類学からの土偶へのアプローチは、いわば学際的な研究と言える。

「竹倉さんは今回、イコノロジー(見た目の類似)を活用していますが、考古学では長い間イコノロジーを排除してきました。それだけに従来の考古学への批判も辛口ですね、縦割り化した知性、学問のタコツボ化だと?」(足立)

「考古学は土偶アプローチの一つにすぎず、それだけで謎が解けるはずがありません。私は自分の専門である人類学や宗教学はもちろん、植生史でも地質学でも、あるいは民俗学、環境文化史など使えるものは何でも利用します」(竹倉)


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