WEDGE REPORT

2012年12月14日

»著者プロフィール
著者
閉じる

木村幹 (きむら・かん)

神戸大学大学院国際協力研究科教授

1966年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士前期課修了。ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センター客員研究員、神戸大学大学院国際協力研究科助教授などを経て現職。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。

 重要なのは、北東アジアのパワーバランスの変化の中で、韓国の外交方針が揺らぎつつある、という事だ。時に領土問題や歴史認識問題における中国との連携が指摘される韓国だが、実際の外交方針は外部から想像されるほど、確固たるものではない。限定された国力の中、政府も世論も周囲を見回しながら、進むべき道を考えている。それが韓国の現状なのだ。日本も、このような韓国の状況をよく理解して、北東アジア戦略を練り直す時期がやってきている。

韓国貿易における日米中のシェア 
(出所)韓国統計庁資料等よりウェッジ作成
拡大画像表示

 韓国にとっての問題は、北東アジアのパワーバランスの変化が、中韓の関係を大きく変えようとしている事である。第1に重要なのは、中国海軍力の急速な増強である。北朝鮮の脅威を前提に、陸軍中心の軍備増強を続けてきた韓国の海軍力は、わが国と比べて遥かに貧弱である。加えて、韓国が頼みにするアメリカは、北東アジアにおける領土問題において中立的な立場に終始しており、国際法上の島でさえない暗礁を巡る争いにおいて、韓国の側につくとは思えない。離於島における気楽な「火遊び」は、今や危険なゲームへと変わりつつある。

 しかしながら、韓国の中国に対する姿勢をより困難にしているのは経済的な情勢の変化である。韓国経済が中国への依存を深めているのだ。例えば、10年、韓国の貿易に占める中韓貿易の比率は21%を超え、韓国のGDPに対してさえ20%以上に達している。多くの韓国人は、このままではやがて巨大な中国に飲み込まれてしまうのではないか、という不安感を有している。

 だが、韓国が中国との関係を断ち切る事ができるのか、といえばその答えはNOになる。例えて言えば、韓国にとって中国との関係は、麻薬のようなものである。長期にわたって依存を続ければ、やがてこの関係を断ち切れなくなる。しかし、いきなりこれを断ち切れば、禁断症状にも似たパニックが待っている。

尖閣問題で危機感を強める韓国

 このような中勃発した尖閣諸島を巡る日中の衝突は、韓国をして「次はわが身」という危機感を強めさせた。韓国を震撼させたのは、日本に対する中国の姿勢が、予想よりも遥かに強硬だった事だ。背景には、韓国の中国に対する一方的な期待が存在した。北東アジアを巡る国際関係を、日米同盟と中国との対立を前提に考えがちなわが国とは異なり、近年の韓国は、米中関係を必ずしも対立的なものだとは捉えていない。グローバル化する世界においては、どの国も国際社会との協調が不可欠であり、中国の選択肢も自ずから限られてくる、と考えられていた。

関連記事

新着記事

»もっと見る