カマラ・ハリス米副大統領は、8月25日、ベトナムのハノイを訪問し、グエン・スアン・フック国家主席やファン・ミン・チン首相と、両国間の経済、安全保障、コロナ対策支援等について会談した。
9月1日の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国の域内姿勢は米国がベトナムとの絆を深めるチャンスを与えてくれる」と題する論説を掲げ、その中で、同紙中国特派員Kathrin Hilleが、中国はベトナムにとって最大の貿易相手国であるが、ベトナムに要求を突きつければベトナムの米国に対する態度に影響すると述べている。
米国とベトナムは、長年にわたるベトナム戦争の対決を経て、これまでにない和解の関係にあると言う。特に近年は安全保障面で密接な関係にあり、またベトナム国民の92%が米国の影響を歓迎すると述べているとのことである。
これに対し、ベトナムと中国の関係はこれまで対立の様相が強かった。南沙諸島と西沙諸島をめぐって領有権争いを繰り返すとともに、中国がベトナムが管轄権を主張する海域で石油の掘削を決めたり、ベトナムの漁船が中国の沿岸警備艇に衝突され沈没したりする紛争が絶えなかった。
しかしベトナムは中国との関係に大変気を使っているとのことである。例えば、ベトナムの首相は、ハリス米副大統領と会談する前日、駐ベトナム中国大使と会談している。このような配慮の理由は経済である。
ベトナムにとって中国は圧倒的に重要な経済パートナーである。2020年のベトナムの貿易で、輸出相手国としては中国は米国についで2位であり、輸入相手国としては 1位であった。このようにベトナムにとって中国は経済的に不可欠の存在であり、多少の政治的対立や領土に関わる摩擦があっても、中国の重要性は変わらない。