2022年7月6日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年9月23日

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 ヒルの論説は、もし米国がTPP(環太平洋連携協定)に復活し、サプライチェーンを中国から切り離すための再編の過程でベトナムへの投資を増やす努力をすれば、ベトナムと米国の経済的関係は重要性を増すだろうと言っているが、ベトナムと中国の経済関係には及ばないだろう。

関係強化には経済的戦略が不可欠

 ベトナムが米国と中国の関係のバランスを取るように努めていると言っても、それは安全保障を含めた全体の話であり、こと経済に関しては、中国がより重要である。

 識者は米国がベトナムとの結びつきを高めるには経済的戦略が必要であると述べている。ベトナムを米国のサプライチェーンの中に組み込むなどをすれば、確かに米国とベトナムとの経済関係は強化されるであろうが、ベトナムにとっての中国の重要性は変わらない。

 ただ中国はその状況に安住することはできない。貿易に限っても、ベトナムの輸出相手国の1位は米国であり、中国を上回っている。ベトナム国民も92%が米国の影響を歓迎すると言っており、親米である。中国が大国主義的態度でベトナムに接すると、それがベトナムと米国の関係を深めることになるとのフィナンシャル・タイムズ紙の論説の見出しは、その間の事情を端的に表しているものである。

 この米越、中越関係の地政学において、日越関係が果たす役割は少なくない。日本とベトナムとの間には大きな対立関係は存在しない上、近年では、両国間では安全保障上も経済的にも、緊密な関係を築いている。政治的制度としては、ベトナムは社会主義を標榜しているが、インド太平洋の一角を占める地政学上重要な国であり、日越関係の強化は、米越関係とも並んで「自由で開かれたインド太平洋」を推進させることになるだろう。

  
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