世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月14日

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 見直しの議論にはEUの復興基金による復興の進捗状況、とりわけ、イタリアの巨額の計画の進展如何が影響を持つであろう。見直しの結果は、原則的なルールを変更すること(それがEU条約の改正を伴う必要があるのか否かは分からない)と環境政策のような一定の分野での財政支出を公的債務と財政赤字との関係で特別扱いすること、双方の組み合わせになるのではないかと思われる。

EUはいかに新たなルールを作るのか

 EUは、緑の変革とデジタル化を中核に据えたパンデミックからの復興を目指しており、これらの分野の投資を切り出して特別扱いとすることに加盟国間で大きな困難はないのかも知れない。もっとも、それは対象となる投資の規模にもよるであろう。

 ジョセフ・スティグリッツ教授は、9月22日付けフィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘Europe should not return to pre-pandemic fiscal rules’で、EUがパンデミック前のルールに立ち戻ることは間違いであり、公的債務のGDP比を減らすには投資で分母を増やすべきだとして、より柔軟で思慮深い財政運営を求めている。

 それはその通りなのだが、公的債務と財政赤字を規制する「収斂基準」はユーロを創設にするに当たり、ユーロ圏を通じて加盟国の協調した行動を確保し、出来るだけ均質な経済体質を作り、それによりユーロの価値を維持することを意図したものである。したがって、柔軟性は持たせつつも、加盟国の野放図な財政運営を規制する明確なルールの維持は避け得ないのであろう。

  
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