低投票率がもたらす世代間格差
実際、世代会計の試算結果からは、20年に出生した0歳世代の生涯純税負担率は21.9%であるのに対して、その親に相当する世代である30歳世代では12.5%、更にその親に相当する世代の60歳世代では8.2%であり、孫と祖父母の間の世代間格差は13.7ポイントに過ぎない。
それに対して、20年時点では未出生の将来世代の生涯純税負担率は70.4%と、現在世代のどの世代よりも重い負担を負う運命にあると同時に、現在世代で最も負担が大きい0歳世代よりも48.5ポイントも大きいことが分かる(図2)。つまり、財政赤字ファイナンスによって高齢者は受益を享受し、その「代金」はより若い世代のキャッシュカードを勝手に使ってツケ回ししている構図が明らかになる。
現在の日本の財政・社会保障制度は、右肩上がりの人口・経済を前提としたままとなっている。世代会計の試算結果からは、先細り貧乏になっていくより若い世代が、以前よりは豊かになり膨れ上がっていく高齢世代を、世代間連帯という美名のもと、世代間連帯とは本来双方向のものであるはずにもかかわらず、実は現役世代が片務的に高齢世代の面倒を見させられているという現状が白日の下にさらされる。
シルバー民主主義に覆いつくされるニッポン
この片務的な世代間連帯の構造改革なくして、若者世代と高齢世代の間の世代間格差の是正はない。ただし、給付には見合いの財源が必須であり、年齢問わず、負担できる者は負担し、困った立場にある人にはしっかり給付が行き届く社会にすべきだ。
しかし、現時点で判明している与野党の政策方針から判断する限り、岸田文雄首相は、自民党総裁選中に「(消費税率は)10年程度は上げることは考えない」「すぐに増税で財政(赤字)を埋めることはまったく考えていない」と発言しているし、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組による政策協定では、「消費税は減税」とする一方、「医療、介護や教育等公的支援を拡充」するとするなど、バラマキ優先で、若者世代への負担の先送り(逆に言えば、高齢世代の負担増)を是正し、財政再建を積極的に主張する政党は、与野党問わず残念ながら見当たらない。
つまり、この点では、日本はシルバー民主主義にすっかり覆いつくされているのである。
投票は若者には不公平な「ゲーム」
解決策を提示することもなく、かくも深刻な世代間格差を放置したまま「選挙に行こう!投票しよう!」と若者に上から目線で言っても、結局、自分たちの利権構造を温存しつつ、「あなた方若者も投票した結果だから現状を受け入れるしかないよね」、という現状追認のアリバイ作りに利用されるだけだ。つまり、誤解を恐れず踏み込んで言えば「選挙に行こう!投票しよう!そして老人支配を追認しよう!」と言っているのに等しい。
しかし、だからと言って、選挙を棄権すれば済むかというとそういうわけにもいかない。なぜなら、棄権者は投票しない自由を行使できたとしても、選挙結果やその後の政策展開がどのようになろうとも、日本で生活を送り続ける以上、無条件にそれを受け入れ、従わなければならないからだ。