達雄が死んだことから、実の母の真田梓(薬師丸ひろ子)が、梨央を引き取ることになった。白川郷の旧家から、東京の豪邸に引っ越して、志望がかなった大学の薬学部に通うことになる。
一方、白山大学陸上部では、部員が大麻をやっていたことが警察沙汰となって、梨央の恋人である、宮崎(松下)はとばっちりをくって、就職の内定を取消された。大麻を寮に持ち込んだのは、OBの大学院生である、渡辺康介(朝井大智)。しかし、彼は行方不明となる。父親の昭(酒向芳)は息子の行方を懸命に追う。
あの夜、なにが起こったのかを梨央が知るのは、白川郷に帰省したときだった。弟の優がなくしたといっていた、自分の携帯電話が父親の達雄の遺品のなかから出てきたという。
「怖くて、ひとりでは見られん。見たら消しておいてな」と、優はいって部屋の外に出る。ガラケイの小さな画面に映し出された映像は、行方不明になっている渡辺が、梨央の足首をつかんでひきずっていこうとしている場面だった。「明日になったら忘れる」と、渡辺はつぶやいていた。
優が渡辺を止めようとして、細長い金属製の棒で彼を刺す場面が続く。渡辺は血まみれになりながら、天井向きになっていた梨央の上に倒れ込む。
この5年後、優は失踪する。
社長と刑事で2人は〝再開〟
2021年、事態は突然動いた。行方不明になっていた、渡辺が地元で白骨死体となって、発見されたのだった。しかも、骨に刺し傷の痕跡があった。
梨央の恋人だった、宮崎は、警視庁捜査一課の刑事になっていた。渡辺の死体発見とほぼ重なるようにして、父親の昭が東京で殺されて発見された。警視庁が、昭の足取りを追う中で、真田ホールディングスの傘下の真田ウェルネスの社長となった、梨央のもとを昭が訪れて、食い下がる映像が、社内の防犯カメラから見つかった。
宮崎と相棒の所轄署の桑田仁美(佐久間由衣)が、梨央を会社の入口で待ち構える。「警視庁の宮崎です」と名乗る彼に、梨央は「真田梨央です。はじめまして」という。梨央は所轄署で任意の事情聴取に応じた。
宮崎は、一片の紙を示す。白骨死体で見つかった父で、殺された昭の発見現場に落ちていたものだ。それは、梨央がかつて、陸上部員のためにお守りを作ったときに、なかにいれた「必勝祈願」の文字が書かれていた。
宮崎 あなたは、これを知っていますか?
梨央 刑事さんは、知っていますか?
宮崎 わたしが質問しているんです。
深夜、梨央の家の近くで、宮崎は待ち構えている。
宮崎 ほんとうのことが知りたい。秘密は守る。友人として聞きたい。
梨央は心のなかでつぶやく。「昔は家族の秘密を守るのが怖かった。あのころの私とは違う」。そして、宮崎にこう告げる。
「何から話します?」
そのころ、捜査本部では、殺された昭が見つかった現場付近の監視カメラが、梨央の姿をとらえていることがわかる。