田部康喜のTV読本

2020年1月19日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(microgen / gettyimages)

 「知らなくていいコト」(日本テレビ・毎週水曜午後10時)は、吉高由里子が演じる、週刊誌「イースト」記者・真壁ケイトが自らの出生の謎に苦悩する心理ドラマである。シングルマザーだった、映画評論家で字幕翻訳家の杏南(秋吉久美子)がクモ膜下出血で急死する直前、ケイト(吉高)の父親について謎の言葉を残す。

 ケイトをめぐる恋模様が、彼女の苦悩と癒しの物語にからみあう。脚本は、「セカンドバージン」(2010年・NHK)や「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018年・TBS)などをてがけた大石静である。ケイトの心の揺れを感じさせるセリフの数々もドラマの魅力である。

 母・杏南は、テレビ番組の収録中に倒れ、病院に運ばれ、職場から駆けつけたケイトに、「あなたの父親はキアヌ・リーブスだ」と告げて逝ってしまう。遺品を整理していたケイトは、杏南とキアヌ・リーブスが肩を寄せ合っている写真をみつける。

 遺品のなかからみつけた、もうひとつの重要なものは、杏南の大学卒業論文とファイルのフォルダーに閉じられるように残っていた指輪だった。論文はジョン・スタインベックに関するものだった。指輪を購入した宝飾店にあたると、杏南に贈った男性の名前は、乃十阿徹(のとあ・とおる、小林薫)だった。

 乃十阿という名前に記憶があったケイトが、スマーフォンの検索サイトで調べると、スタインベック研究を専門にしていた、大学教授であり、キャンプ場で2人の死亡者がでたほか多数の負傷者も発生した無差別殺人犯であることがわかった。

 ケイトは、自分の名前の由来についても知らなかったが、スタインベックの長編小説「エデンの東」の登場人物であることにも気づいた。乃十阿が母の杏南の卒論の指導教官だった時代が重なっていた。

 同じ編集部にいる恋人で結婚を申し込まれていた、野中春樹(重岡大毅)にケイトは、秘密を打ち明けた。無差別殺人犯のこどもである可能性に苦悩していたケイトに対して、野中は「ケイトが誰のこどもであってもかまわない。ケイトはケイトなんだから」といった瞬間に、ケイトは野中に抱きついた。

 しかし翌日、ケイトのマンションに現れた野中は「結婚の話はなしにして欲しい。僕はこどもが欲しい。こどもが生まれたときに君の父親が無差別殺人犯とわかったことを考えると……」といって、マンションの合い鍵を置いて逃げるように去っていった。

 ケイトは、母の杏南と親しかったカメラマンの尾高由一郎(柄本佑)が、無差別殺人犯の乃十阿徹(小林)のグラビア特集を組んだことを思い出して、事情を聴くことにした。尾高は、野中と付き合う前の元カレである。グラビア特集を読んだ杏南に尾高は呼び出されて、「もう乃十阿を追わないで。彼はケイトの父親なの」と打ち明けられたという。

 そのことがあってから、尾高はケイトに結婚を申し込んだ。「わたしが、無差別殺人犯のこどもだって知っていたのに結婚を申し込んだの」とケイトはいって、涙を流すのだった。

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