2024年12月23日(月)

田部康喜のTV読本

2019年12月20日

(ronniechua / gettyimages)

 NHKスペシャル・シリーズ「体感 首都直下地震」は、12月初旬の1週間にわたって首都直下地震が襲うさまざまな災害の現象をドラマとドキュメンタリー、専門家の解説によって、真正面から挑んだ。テレビは新しい表現形式によって、テキスト・メディアを凌駕しようとしている。

 NHKスペシャル・シリーズ「体感 首都直下地震」は、12月初旬の1週間にわたって首都直下地震が襲うさまざまな災害の現象をドラマとドキュメンタリー、専門家の解説によって、政府が30年以内に70%の確率で発生するという地震に真正面から挑んだ。過去と現在、未来を描くことは、文章つまり新聞やノンフィクションが本来得意とするところであるが、映像の世紀である20世紀を超えて、テレビはついに新しい表現形式によって、テキスト・メディアを凌駕しようとしている。

 シリーズの圧巻は、今の東京と別の架空の「パラレル東京」で、放送当日の12月2日午後4時4分にM7.3の首都直下地震が発生した、やはり架空の民放NNJのニュース・センターと被災の中継を織りなしたドラマである。発生日の「DAY 1」から4回連続で「DAY 4」まで、シリーズは冒頭にドラマを置いて、群衆雪崩や火災旋風、広域通信ダウンなど、ニュース・センターの編集長の江口繁之(高橋克典)とメインキャスターが被災したために、急きょキャスターの席にすわった、サブキャスターの倉石美香(小芝風花)、副編集長の大森忠夫(小市慢太郎)らの群像劇である。

 ニュース・センターに次々と送られてくる被災状況は、CGを駆使した迫真の映像である。

 六本木のビルが倒壊する、環状7号線の道路にもビルが倒壊して大渋滞となる、杉並区や世田谷区の木造密集地帯から火の手があがる、北区のJR王子駅付近でがけ崩れによって電車の車両が横転している。

 ヘリコプターからの丸の内の映像を見ながら、実況していた倉石(小芝)が「なんでしょうか。丸くなった状態のものの周囲に大勢の人が集まっています」。副編集長の大森(小市)が叫ぶ。「群衆雪崩だ!」。避難する人の流れが、途中で倒れ込んだり、座り込んだりする人がでると、雪崩のように折り重なって、多数の人が圧死する現象である。

 渋谷では、2000人以上が群衆雪崩に巻き込まれて、100人以上が心肺停止状態になっている、という情報が入る。

 ドラマのあとに続く、政府の予測やさまざまな被害を防止する方法をドキュメンタリー方式で紹介するなかで、渋谷の群衆雪崩のシュミレーションが紹介された。渋谷の群衆雪崩は、スクランブル交差点では起こりにくく、狭い路地から大通りに出た地点で発生が予測されている。林立するビルによって、視野が狭くなっているなかで、避難する人の流れに合わせて進行していくと、大通りの地点で多くの路地から殺到した人々によって混乱して、群衆雪崩が発生するのである。


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