2024年12月23日(月)

田部康喜のTV読本

2013年5月29日

 渋谷の夜のスクランブル交差点を下から見上げながら、カメラの目はなめるようにしてゆっくりと林立するビルを映し出していく。どこかうつろな視線である。そして音声がないままに映像は地下のクラブへと進んでいく。

 女優の吉高由里子が、タトゥーを背に入れる美少女を演じた、映画「蛇にピアス」(2008年)の冒頭のシーンである。監督の世界的な演出家である蜷川幸雄の映像は、退廃的な都会の風景のなかに吉高を美しく浮かび上がらせる。

 公開時に二十歳になったばかりの吉高は、この作品で同棲するボーイフレンドとタトゥーの彫り物師との鮮烈な愛欲シーンを初めて全裸で演じた。この年の日本アカデミー賞の新人賞など、各種の新人賞を獲得した。

大人の女優として
どのような道を歩み出そうとするのか

 フジテレビの月曜ドラマ「ガリレオ」は、物理学者・湯川学役の福山雅治とともに、難事件の解決にあたる貝塚北署の刑事・岸谷美砂役として、その吉高が登場している。

 有名大学の法学部出身のキャリアである岸谷は、エリート意識を身にまとっている。物理学を応用して事件の謎に迫る湯川と、ぶつかり合いながらも協力して解決に至る。

 「君は美人じゃあないよ。顔の部分の比率が美人と認識される比率とは違う」

 「でもかわいいっていわれる」

 「かわいいと美人は違うでしょ」

 理科系の論理家の設定の湯川と、文科系の捜査官の岸谷との台詞のやり取りはコミカルである。エリートを演じながらコメディアンヌの隠し味もときにみせる。

 美少女として女優のスタートラインに立った吉高は、20歳代半ばとなって、大人の女優としてどのような道を歩み出そうとするのか。

 「ガリレオ」の捜査官・岸谷役にはそんな興味がわくのである。

夏川結衣と競演

 第6話「密室る―とじる」(5月20日放映)を観る。


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