「最愛」(TBS、金曜よる10時)は、吉高由里子が久々に凄みのある演技を魅せる、極上のサスペンスである。ラストまで引きつける、今季の最高傑作になる予感がする。
可憐な印象の映像による「吉高」像とは、対照的に凄みのある女優でもある。金原ひとみの芥川賞受賞作『蛇にピアス』の映画化(2008年・蜷川幸雄監督)において、大胆なオール・ヌードシーンによって主人公の少女の激しい内面を表現してみせた。レイプが通底音になっている「重力ピエロ」(2009年・森淳一監督)のストーカー役もそうだろう。
ドラマは、現在と15年前の過去がからみあう。清純な少女として登場した、吉高が、凄みのある女性としていま立ち現れる。
大学の薬学部を目指している、高校3年生の朝宮梨央(あさみや・りお、吉高由里子)は、白川郷の実家で、白山大学の陸上部の寮父として働いている、父・達雄(光石研)と、その再婚相手との間に生まれた、弟の優(柊木陽太)と暮らしている。公園の遊具から落下して、頭を打った優は、記憶障害が残った。梨央の薬学部志望は、そんな弟の治療薬を開発したいという願いからだった。
梨央(吉高)の実の母は、介護施設を幅広く展開している真田ホールディングスのトップに君臨している、真田梓(薬師丸ひろ子)である。達雄と離婚して、梨央の兄の政信(奥野瑛太)だけを連れて、東京の実家で経営に携わるようになった。
白山大学陸上部のエースである、宮崎大輝(みやざき・だいき、松下洸平)と梨央は、互いに心惹かれる相手だった。
「あの夜」から事態が変わる
梨央の大学受験の直前に事件は起きた。深夜に帰宅した、父・達雄が梨央に対して「もっとおとうさんが早く帰っていれば……」という謎の言葉を残した。翌日、達雄はクモ膜下出血によって急死した。
何者かによって、薬物を飲まされて、意識を失って、両足首を持たれて引きずられる、フラッシュバックが梨央を襲う。いったい、なにが起こったのか。