セキュリティー対策「ゼロリスク思考」の壁
Yone-laboメンバーのように即戦力となる人材を求めている企業は少なくないだろう。だが、経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、サイバーセキュリティー分野における人材不足が2030年に向けて、一層深刻化すると想定されている。この状況を打破するカギはどこにあるのだろうか。
一つのヒントは「セキュリティーに特化して勉強していたわけではなかった」と話す丸山さんの話にあるだろう。攻撃を受けにくい設定に変えることや、情報が漏れないように記録先を移動するなど一つひとつの対処は、ITの基礎知識と紐づいている。
つまり、未知の攻撃にも対処できる卓越した人材だけでなく、セキュリティーの観点を持ってシステムを構築したり、ツールを扱ったりできるように、ベースラインの底上げを図る。K-SECでも「質」を重視して飛び抜けたサイバーセキュリティー人材の養成を目指す一方で、情報系以外の高専生を対象に「量」の拡大も重視し、階層的な人材育成を行っている。
一方で、現在ITエンジニアとして働く望月さんは、国や経営者層の理解なしにはセキュリティー対策もIT活用も進まないと指摘する。
「セキュリティーの考え方として、攻撃された時の被害コストよりも対策のコストが上回る場合には、そのリスクを受容する場合もあります。ゼロリスクでしか物事を考えられないと、そうした対策をする・しないの判断もできません。リスクを受容しようとしない風潮がそもそもセキュリティー対策と相いれないのです」
「IT人材」という言葉が使われるようになって久しく、時代は人工知能(AI)やビックデータ活用で新たな価値を創出しようとしている。では、それ自体は価値を生み出さないセキュリティーにどうやって意識付けをしていくのか。今、改めて問われている。
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