2024年12月8日(日)

知られざる高専の世界

2021年11月6日

セキュリティー対策「ゼロリスク思考」の壁

 Yone-laboメンバーのように即戦力となる人材を求めている企業は少なくないだろう。だが、経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、サイバーセキュリティー分野における人材不足が2030年に向けて、一層深刻化すると想定されている。この状況を打破するカギはどこにあるのだろうか。

 一つのヒントは「セキュリティーに特化して勉強していたわけではなかった」と話す丸山さんの話にあるだろう。攻撃を受けにくい設定に変えることや、情報が漏れないように記録先を移動するなど一つひとつの対処は、ITの基礎知識と紐づいている。

 つまり、未知の攻撃にも対処できる卓越した人材だけでなく、セキュリティーの観点を持ってシステムを構築したり、ツールを扱ったりできるように、ベースラインの底上げを図る。K-SECでも「質」を重視して飛び抜けたサイバーセキュリティー人材の養成を目指す一方で、情報系以外の高専生を対象に「量」の拡大も重視し、階層的な人材育成を行っている。

K-SECの人材輩出モデル
体系的にセキュリティー知識を身につけた高専生の育成を目指している(国立高専機構サイバーセキュリティ人材育成事業(K-SEC)HPより)写真を拡大

 一方で、現在ITエンジニアとして働く望月さんは、国や経営者層の理解なしにはセキュリティー対策もIT活用も進まないと指摘する。

 「セキュリティーの考え方として、攻撃された時の被害コストよりも対策のコストが上回る場合には、そのリスクを受容する場合もあります。ゼロリスクでしか物事を考えられないと、そうした対策をする・しないの判断もできません。リスクを受容しようとしない風潮がそもそもセキュリティー対策と相いれないのです」

 「IT人材」という言葉が使われるようになって久しく、時代は人工知能(AI)やビックデータ活用で新たな価値を創出しようとしている。では、それ自体は価値を生み出さないセキュリティーにどうやって意識付けをしていくのか。今、改めて問われている。

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■脱炭素って安易に語るな
PART1 政治主導で進む脱炭素 日本に必要な〝バランス感覚〟
編集部
PART2 おぼろげな46%減を徹底検証〝野心的〟計画は実現なるか
間瀬貴之(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
永井雄宇(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
PART3 高まる国家のリスク それでも再エネ〝大幅増〟を選ぶのか
山本隆三(常葉大学名誉教授)
PART4 その事業者は一体誰?〝ソーラーバブル〟に沸く日本
平野秀樹(姫路大学特任教授)
PART5 「バスに乗り遅れるな」は禁物 再び石油危機が起こる日
大場紀章(ポスト石油戦略研究所代表)
PART6 再エネ増でも原発は必要 米国から日本へ4つの提言
フィリス・ヨシダ(大西洋協議会国際エネルギーセンター上席特別研究員)
PART7 進まぬ原発再稼働 このままでは原子力の〝火〟が消える
編集部
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Wedge 2021年11月号より
脱炭素って安易に語るな
脱炭素って安易に語るな

地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。


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