2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年11月9日

 「コンディショナリティの仕組み」については、欧州議会から欧州委員会に発動するよう圧力がかかっている。10月29日には、欧州議会は、欧州委員会がコンディショナリティの発動を怠っているとして、欧州委員会を欧州司法裁判所に提訴したことを発表した。

選挙前になぜ?

 ポーランドのモラウィエツキ首相は、欧州議会における発言で「恐喝は政策の手法であってはならない」として「財政的懲罰」が語られていることに強く反撥したが、Polexit(ポーランドのEU離脱)を強く否定した。ポーランドが今後どう動くは予測し難い。

 モラウィエツキのPiS(法と正義)政権は何故に2023年の選挙を勝つために必要な復興計画「Polish Deal」にEUの財政支援を得られないこととなる危険を冒してまで敢えてEU法の優越性に挑戦しているのか、理解しがたい面がある。彼等の言う司法の改革の正当性をあくまで主張したいということであろうが、そこまでして、PiS政権は何処に選挙の勝算を見出そうとしているのか判然としない。

 野党側にはドナルド・トゥスク(前首相、前欧州理事会議長)がおり、彼の戦略はPiSが国を「Polexit」に誘導しつつある事実を宣伝することである。10月10日、憲法裁判所の判決の直後にワルシャワで10万人もの抗議デモが行われ、同様のデモが他の120の都市で行われた由である。

 欧州委員会は慎重に行動するであろう。間違っても「Polexit」にはしたくない。ポーランドが理性に立ち返ることになお淡い希望を抱いているかも知れない。フォン・デア・ライエン委員長は欧州議会におけるステートメントを「ポーランドよ、君はヨーロッパの中心にある、これからも常に中心にある。ポーランド万歳、ヨーロッパ万歳!」とポーランド語で締めくくった。

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