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バイデンのアメリカ

2021年11月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 事前通告はなかったに等しい、外交儀礼無視の措置だっただけに、一時は米仏関係に暗雲がたちこめた。ここでもホワイトハウス側の拙速のそしりは免れない。

 しかし、表面化したこの二つの失態の背景には、政権発足1年目で一つでも多く成果を誇示しておきたいとの焦りが共通してあったことは明らかだ。第46代大統領としての真価が問われる中間選挙まであまり時間的余裕もなく、しかもその展望はけっして楽観を許さ ない情勢だけに、できるだけ早期に、国民向けにリーダーシップ発揮ぶりを印象付けておきたいとの思惑が働いたと見られている。

「政府そっくり移動」でCOP26に参加

 その意気込みは、先月末、英国エディンバラで開幕した国連気候変動枠組み条約第26回条約国会議(COP26)への異例ともいえる米政府の取り組み姿勢にも示された。

 トランプ前政権が環境問題を軽視、国連気候変動会議に閣僚以下の小規模代表団派遣でお茶を濁したのとは対照的に、今回大統領は、ブリンケン国務長官、イエレン財務長官はじめ「政府がそっくり移動した」(ワシントン・ポスト紙)と評されるほど多数の関係閣僚、各行政機関トップを現地に送り込む力の入れようだった。

 COP26ではバイデン氏自らが、世界200カ国と地域から参集した代表団を前に演壇に立ち「人類は気候変動による存亡の危機に直面している。今こそ世界の指導者たちは立ち上がるべきであり、わが国は2050年までに『温室効果ガス実質排出ゼロ』を達成すべく努力を加速させていく」と熱弁を振るって見せた。孤立主義に彩られた前政権との違いを、ここぞとばかりアピールしたい姿勢がありありだった。

 内政に目を転じると、バイデン氏は当初「(フランクリン・ルーズベルト政権下の)ニューディール政策以来」と大見えを切ったインフラ投資、子育て支援、気候変動対策などからなる3・5兆ドル(約400兆円)の大型歳出法案の早期成立を期した。しかし、これらの法案をめぐっては、大盤振る舞いもいとわない党内進歩派と、財政赤字拡大を懸念する保守派の深刻な対立を引きずったまま収拾がつかず、結局、最終段階では、歳出規模はインフラ投資を目的とした1兆ドル程度にまでバッサリ削減されてしまった。

 もう一つの目玉とされた子育て・教育支援、環境などの2兆ドル近くの大型歳出法案は、党内収拾がつかないまま先送りとなった。

崩れつつある米国民の「信」

 一方で、最新の国内総生産(GDP)成長率も年2%と予想を下回ったのに加え、燃料、食料品などの物価上昇が市民生活を脅かし始めており、民主党支持者の間では、政権に対する幻滅感がじりじりと広がり始めている。

 去る2日、行われたバージニア州知事選挙で、テリー・マコーリフ元民主党知事が、依然人気度の高いオバマ元大統領の熱心な支援にもかかわらず、新人で実業家のグレン・ヤンキン共和党候補に敗退したことも、そうしたムードの変化の現われにほかならない。ニュージャージー州知事選でも、フィリップ・マーフィー現職民主党知事が、最後はわずか1%差の僅差で辛うじて再選を果たしたものの、予想以上の苦戦を強いられた。

 米メディアの多くは、これら大規模州の選挙結果を踏まえ、「有権者とくに無党派層のバイデン離れが始まった」(ニューヨーク・タイムズ紙)との見方を伝えている。

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