2022年12月3日(土)

バイデンのアメリカ

2021年11月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 就任以来、50%前半から40%台後半で推移(ギャラップ世論調査)してきた大統領支持率も、最近では42%(NBC調査)と低調のままだ。任期4年を通じ平均40%にも達しなかったトランプ前大統領にはわずかに上回るものの、一時は60%台にも達した同じ民主党のオバマ元大統領には遠く及ばない。米議会では一部の民主党議員の間から「このままでは2024年大統領選で共和党に政権を明け渡しかねない」と、早々と警鐘を鳴らす動きさえみられる。

「出馬」「不出馬」どちらの表明でもマイナス要素が

 さらに、バイデン氏は、次期大統領選への出馬問題について、「そのつもりだ(That’s my expectation)」とあいまいに答えてはいるものの、いまだに出馬正式表明やそのための具体的態勢づくには着手していない。トランプ氏が2017年1月、大統領就任とほぼ同時に、ホワイトハウス内に「再選委員会」を立ち上げたのとは好対照だ。

 このため、危機感を強める「民主党全国委員会」(DNC)幹部の一人は、政治メディア『ポリティコ』とのインタビューで『優柔不断な姿勢も支持率低迷の一因だ』として、再選に向けての早期の態勢づくり開始を促した。

 ただその一方で、もしバイデン氏が出馬を正式に決意した場合、24年秋には82歳と米政治史上前例のない〝超高齢〟を迎えることになり、激戦を戦い抜くだけの健康と体力に不安はぬぐえない。COP26会議では、たまたま討議の最中にバイデン氏がうたた寝する場面がカメラでとらえられ、内外で少なからず話題となった。

 しかし現時点で「不出馬」表明した場合、残り3年の任期はとたんに「レームダック」化は避けられず、そのことが自身の決断を遅らせているとの観測もある。

区割りにより劣勢に立たされている中間選挙

 何はともあれ当面、バイデン氏にとっては、来年11月の中間選挙が勝負だ。しかし、現議会勢力は下院で民主党220議席、共和党212議席、欠員3議席、上院は民主、共和両党とも共に50議席で、民主党が辛うじて優位にあるものの、伝統的に大統領の信任を問う中間選挙では政権与党が議席数を減らす傾向にある。

 加えて今回の場合、全米50州中、30州以上の州議会で多数を占める共和党が、2020年国勢調査の結果を踏まえ各選挙区の区割りを同党に有利に書き換える作業に取り組んでいることを踏まえ、例年以上に多くの候補の当選を見込んでいる。

 共和党議員の間では、下院でわずか5議席上積みするだけで、下院議長ポストを奪回できるだけでなく、上院も1議席増で多数を制する位置にあるだけに、早くも楽観ムードさえ漂い始めている。

 この点、バイデン政権としては、とくに下院を明け渡すことになれば、今後の野心的な経済浮揚策、地球温暖化対策などを目玉とする予算審議に大きな支障となりかねず、より厳しい状況に直面することは間違いない。

 もちろん、今後、コロナワクチン接種の徹底や所得格差是正など意欲的な政策を実現させ、目に見えた景気回復を図ることで、劣勢を挽回させる可能性はまだ残されている。

 しかし、このままずるずると支持率を落とし、もし、中間選挙で共和党の逆転を許した場合、「再選出馬断念」のシナリオさえ現実味を増してくることになろう。

 いずれにしても、バイデン氏にとって残された時間はあまりない。

  
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