尖閣問題の落としどころは…
ただ、尖閣問題について、どのような落としどころがあるのか、まだ分からない。日中ともに領有権の主張を放棄することはあり得ない。日本が尖閣領有権問題の棚上げと、尖閣の現状維持を確約すれば、中国は領海・領空侵犯をやめるのかどうかも不明だ。
宮本雄二・元駐中国大使は共同通信インタビュー(9月25日配信)で「領有権問題を認める必要はないが、現に中国との間に尖閣をめぐる対立はある。対立の存在を認めて話し合わない限り、事態打開の道は開けない」と述べた。
共同通信が10月9日に配信した独自ダネは、関係筋の話として、日本政府は「領有権問題は存在しない」との原則を堅持しつつ、中国側の領有権主張は「認識している」との立場を打ち出し、沈静化を図る妥協案を検討していると伝えた。
また、丹羽宇一郎・前駐中国大使は退任後の12月20日、日本記者クラブで行った講演で、「日本が『尖閣は実効支配しており、日中間に争いはない』と言っても国際社会は理解不能だ」「『棚上げ』という必要はないし、今さら『領有権争いあり』とは言えないだろうが、係争は認めて中国と話し合いをすべきだ」と述べた。
日中関係 春風は吹くのか
この3案は「領有権争い」の存在は認めないが、係争は認めて、話し合いで和解の道を探るという点で共通している。この精神に沿って、日中の外交当局は局長級、次官級の秘密協議を続けているもようだ。
丹羽氏は講演で「習近平氏(党総書記兼国家副主席)ら中国の指導者はみな対日関係をとても重視している」「日中両国が歩む道は友好以外にない」「春になれば、暖かい風が吹くだろう」と述べ、習氏が国家主席に就任して党政軍の3権を完全に掌握する13年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)後には、日中関係が改善に向かうとの楽観的な見通しを示した。
日中両国による「尖閣の共同管理」という解決策もささやかれるが、中国側が領海、領空侵犯をやめなければ和解とは言えない。安倍新政権発足後に中国側の監視船や飛行機の動きがどうなるのか、注目される。