もちろん、コロナで所得を失った人に、失った所得に応じて所得の一部を補填するのが良いのかもしれない。しかし、2020年度に国民全員に1人10万円配ることになったのは、そういう人を選んでいたらいつ配布できるかが分からないからだった。
あれから1年たったのだから、政府に、そういう人を選ぶ仕組みが出来ていてしかるべきだが、実はできていない。バラマキが悪いというのは、政府がバラマキよりも良いことが出来ることを前提にしている。その前提は正しいのだろうか。
政府は賢く使えているのか
休業支援金は、コロナで所得を失った人に、ある程度、失った所得に応じて所得の一部を補填するという試みだが、うまくいってはいない。申請に必要な書類は、2年間の確定申告書、売上台帳、本人確認書類、通帳などであり、確定申告書を税務署と確認することもないので、不正受給が頻発するのは当然とも思われる。うちもっとも有名な事例が、経済産業省のキャリア官僚2人が、不正受給で逮捕された事件だ(「経産省キャリア2人、「家賃支援給付金」不正受給の疑いで逮捕」読売新聞2021年6月25日)。
経産省も不正受給の多いことを認めて、「不正受給及び自主返還について」で不正受給の返還を求めている 。不正受給には割増返還金、氏名の公表、事案によっては刑事告発するが、「持続化給付金または家賃支援給付金の給付要件を満たさないにも関わらず、誤って申請を行い、受給してしまった場合などについて」、自主的な返還を呼びかけている。
刑事告発の手間が間に合わないほどの「誤った申請」があるということだろう。21年11月11日時点で、持続化給付金の返還申出が2万212件あり、返還済み金額が約155億円、家賃支援給付金の返還申出が1032件あり、返還済み金額が約8億円あるとのことである。さらに、自主返納する前に不正認定されたものも持続化給付金、家賃支援給付金合わせて8億円ほどある(「不正受給及び自主返還について(持続化給付金・家賃支援給付金)」)。
もちろん、不正は一部で、大局的には国民のためになっていると評価すべきかもしれない。であれば、18歳以下へのバラマキも、大局的には役に立つと言うべきではないか。
日本の病床はコロナ以前から無駄
コロナ対策でも、日本は無駄な費用をかけているが(「病床逼迫対策や治療法の確立にいくらかけたのか コロナ対策の費用対効果分析④」)、そもそもコロナ以前から日本の医療費には無駄が多かったのではないか。
人口1000人当たりの病床数は、フランス5.8、ドイツ7.9、イギリス2.4、アメリカ2.8であるのに対し、日本は12.8である(OECD.Stat)。日本人だけが病床の必要な病気に余計にかかる訳はないから、多くの病床は無駄ではないか。もちろん、財務省と厚生労働省は、世界的に見て異常に多い病床数を減らせと言ってきた。
それができなかったことがコロナ禍においては幸いだったと私は思っていたが、実際には、多すぎる病床はコロナ禍では役に立たなかった。