そもそも早く処理することがどうしても必要なのだろうか。神戸には土地がないから一刻も早く片付ける必要があったのだろう。しかし、東日本の被災地には津波の危険があるので使えない土地がいくらでもある。現地を見れば一目瞭然だが、打ち捨てられた土地のごく一部にガレキが積み上げられている。地元にも、ゆっくり地元で処理していけば雇用が生まれると指摘する人もいる。
もちろん、何が風に乗って飛んでくるか分からないから早く処理して欲しいという人もいる。それなら、土やビニールシートをかぶせるだけでも良いかもしれない。横浜の山下公園は関東大震災のガレキを埋め立てて作ったものである。臨機応変に実情に応じて処理する力が失われているのではないだろうか。
本誌11年9月号や拙著『震災復興 欺瞞の構図』(新潮新書)でもすでに書いたことだが、他にも、一戸9坪で500万円以上かかる仮設住宅(坪55万なら立派な恒久住宅が建つ)、一戸3000万円かかる高台移転(山に行けばいくらでも土地がある。市街地にも微妙に高い土地がある)、コストの高い再生エネルギーを使うエコタウンなど、兆単位の無駄になりかねないプロジェクトが多々ある。
さらに、産業空洞化対策としての立地補助金が5000億円ある。空洞化の原因は円高で、円高是正策こそが最大の空洞化対策ではないだろうか。災害関連融資関係経費6716億円が計上されているが、これは低利融資のための補助金で、融資額として11.6兆円に膨らむことになっている。しかし、金融庁によると、岩手、宮城、福島の沿岸部で金融機関の抱える企業・個人向け債権は1.2兆円だという(日本経済新聞11年5月26日)。
11.6兆円には震災と関係のない融資が含まれているのではないか。また、被災3県への国から地方への補助金である地方交付税交付金、復興交付金は復興予算の総額で4.7兆円である。ところが、3県の公表している公共施設の損害額は2.7兆円程度である(前掲拙著の表1−1による)。被災した以上のことに予算を使おうとしているのではないか。
これまでの経緯にとらわれず、予算を見直すことが必要ではないか。
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