2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月16日

 北朝鮮への関与ほど報いの少ない作業は無い。米国は平壌を無視すべきである。下手に怒りを表明すれば、北がこれまで通り付け込んでくるだけである。

 平壌が中国を意図的に挑発したかに見える行動を取ったことは、米国が北朝鮮問題につき中国と対話を始める良い機会となる。北朝鮮に変化が起こるとすれば、中国を通じてであろう。米国は、北のあらゆる挑発の機会をとらえて、中国が行動を取ることが中国の利益になることを説得すべきである、と論じています。

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 この論説は、米国の国際問題への関与を最小限にすべしとする、リバタリアン(ケイトー研究所はその代表的研究機関)の面目躍如たる論調です。

 バンドウが主張する通り、中国としても、北朝鮮の核・ミサイル開発が進み過ぎることは避けたいと考えているのでしょうが、中国にとっては、北朝鮮の存続が優先課題であり、北朝鮮に対する圧力にも自ずから限界があることも現実です。金正恩が中国の政治局員との会談直後にミサイル発射を予告したこともその証左と言えるでしょう。

 また、バンドウは中国が行動に出ないのであれば、日韓両国の核保有を認めるべきであるとしていますが、これが米国政府の見解となる可能性は見えていません。さらに、北朝鮮のミサイル発射実験は、予想を超える成功を収めたとの分析が有力でもあり、米国が北朝鮮の挑発を黙殺するという選択肢は、ますます考え難くなっているように思われます。

 ただ、リバタリアンの思想は米国の草の根に深く根付いているものなので、こういう論説を全く無視してよいということでもないのでしょう。バンドウは、韓国や日本に対して自助努力を説く論説を繰り返し発表しています。核保有というのは極論に過ぎますが、自助努力の重要性は傾聴すべきです。

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