2024年12月15日(日)

勝負の分かれ目

2021年12月23日

 これが2年前のコメントであれば、もっと胸を張れていたであろう。しかしながら、ここ2シーズンの不振と照らし合わしてみると、ネットやSNS上のコメントを見る限り「MLB挑戦なんて、どの口が言うのか」とイチャモンを付ける声がどうしても世の中には大半を占めているようだ。それでも山﨑投手は意に介することなく、来季に描く青写真として守護神再定着とチームをリーグV、そして日本一へと導いた後に22年シーズン中に取得予定の海外FA権を行使し、夢のMLB移籍を果たそうと本気で目論んでいる。

常に持ち続けている「挑戦したい」気持ち

 たとえ周囲から嘲笑されようとも、冷ややかな目を向けられようとも「自分の夢」を実現させるべく邁進する原動力は果たして何なのか――。実を言えばMLB挑戦への思いを山﨑投手本人は「プロに入り始める前ぐらいからやっぱり興味はあった。近年で言えば、たくさんの選手が米国で活躍する姿にも刺激を受けている。国際試合であったり、いろんな場面で格上の相手と対戦したことで、僕自身も自分のレベルの力試しではないが、そういう部分にも挑戦してみたいという思いになっている。あとは長いキャリアの中で一度は経験してみたいという気持ち。いろんな思いがある」とも打ち明けている。

 その言葉通り、野球日本代表・侍ジャパンでは稲葉篤紀前監督の下で長きに渡って守護神を務め、19年の国際大会「プレミア12」でも絶対的クローザーとしてチームを初優勝へ導き胴上げ投手にもなった。今年夏の東京五輪でも守護神の座こそ広島東洋カープの栗林良吏投手に譲ったものの侍ジャパンの一員として招集され、2試合に登板、防御率0.00の結果を残し、金メダル獲得にしっかりと貢献している。

 18年の11月に行われ、侍ジャパンとMLBオールスターチームが全6戦相まみえた「日米野球」でも日本の守護神として参加。ここではMLBオールスターチームを率いたドン・マッティングリー監督から同じ侍ジャパンメンバーの福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐外野手とともに「米国に連れて帰りたい」と本気のラブコールまで送られている。加えて「彼の落ちる球はとても素晴らしいし、クローザーとして非常にいい仕事をしていた」とスプリット並みの落差を誇る持ち球のツーシームを大絶賛されていた。

 マッティングリー監督は16年からマイアミ・マーリンズの監督も務めており、20年にはMLBの最優秀監督賞も受賞している人物である。MLB屈指の慧眼を誇り、全米野球記者協会(BBWAA)に所属するビートライター(番記者)泣かせの「世辞嫌い」として知られているだけに、当時の山﨑投手への評価も本音であったことは間違いないだろう。

今なお続くMLBからの評価

 それでは実際のところ、あれから3年経ったMLBの山﨑評はどうなのか。MLBナショナル・リーグ球団の極東担当・日本人スカウトは次のように忖度なしの詳細な分析を打ち明け、来季への展望も明かした。

 「2年前に山﨑投手が調子を落としたのは、やはり〝コロナショック〟によるものが大きいと判断している。NPBのあのシーズンは6月開幕という異常な日程となり、彼にとっても調整が非常に難しい状況だった。また、そのコロナ禍の時期に彼は球団の仕事としてグラウンド外でも球団公式ホームページでオンライン上におけるインタビュアーを務めるなど、使命感から忙殺覚悟でファンサービスを率先して引き受けていたことも情報として把握している。

 今シーズンに関しても大きく調子を落としたのは侍ジャパンの一員として参加した東京五輪の終了後、レギュラーシーズン後半戦以降。山﨑投手本人も昨年と今年に関し『イレギュラーのシーズン』と語っていたが、それに異論はない。加えてここ最近の彼は宝刀のツーシーム一辺倒になることを避け、スライダーやカーブ、チェンジアップも習得中で意図的に幅を広げようと試行錯誤しているところもある。

 順調に行けば、来年は海外FA権を取得するシーズン。チームをリーグ優勝、日本一に導くためだけでなくMLB球団へアピールを図ろうと持てるだけの相当な力を発揮し、キャリアハイの成績を残すぐらいの覚悟で臨むはず。そこに注目しているし、彼の来シーズンには我々を含めMLB数球団がマークしている」


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