もちろん企業も金融機関も利益を求めて活動している。ただ、「失敗」を恐れ、手堅い経営や与信態度にならざるを得ない。組織や政府に保障を求め、制度や規制で現状を縛る。リスクの大きい投資は控え、大胆な新機軸の探求、生産性向上は限られる。
国民の値上げアレルギーが強いので、利益の捻出は、賃金抑制や下請け関係のコストカットに集中する。中小企業には、本来大企業では困難なトライ&エラーを駆使した新事業開拓が期待されるが、逆に資金や経営資源が限られて、労賃の切り詰めや事業主の献身で精一杯の会社も多い。
グローバル資本主義の世界では、資本や労働移動が加速している。そこには副作用もあるが、日本は良くも悪くもガラパゴスだ。海外で儲けた資金も海外で再投資され、内外の市場が分断されている。内向き思考で、世界の多様性もどこまで吸収できているか。
家計に目を転じると、長期にわたり所得が停滞している。低所得ゆえ低消費。将来不安を見越して貯蓄に励むが、株式や債券への投資は控え、多くを現預金で保有する。これでは運用益も得られない。家計がリスクを避ける分、起業家が一身にリスクを背負い込む。
金融機関は、不良債権を恐れて融資を増やせない。特に、担保がない新サービスや情報産業などに十分対応できていない。低所得、低消費、低投資、高貯蓄の中で溜まった現預金は行き場がなく、そこで「政府が使え!」とばかりに国債の大量発行を支えている。
股裂き財政と現預金滞留の
「不幸な合致」
政府に対する国民感情も複雑だ。
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