大統領選挙の行方は?
21年12月10日のドイツ新首相のショルツとの首脳会談では、欧州の強化と欧州主権のために協力することで一致したが、これはいわば、すでにEU加盟国間で共有されている一般的理念のレベルでの総論賛成に過ぎないと思われる。例えば、安全保障の面で、EUの自立を目指すマクロンと米国との関係を重視するドイツや東欧諸国の現実主義の間には距離がある。マクロンのやり過ぎとの印象を与えてしまうと、他のさまざまな構想についてもいろいろ議論が出てくるであろう。
他方、大統領選挙との関係では、有力な対抗馬となる可能性のある共和党のペクレス候補も、具体策においては異なるとしても、EUの強化、移民対策や国境管理の強化、ハイテク投資、グリーン投資の必要性、地球温暖化対策の強化、デジタル企業の規制、アフリカ対策など、重点分野はマクロンの政策と類似している。異なる点は、ペクレスには、自国ファースト的傾向があり、EU統合強化のためにフランスの利益やフランス憲法の原則を損なうことに反対し、将来の増税につながるユーロ債に慎重といった保守的な姿勢を強調している点であろう。
マクロンはいずれ再選立候補宣言を行い、その際に、第2期政権の政治アジェンダを発表し、これが選挙戦の論争のベースとなっていくであろう。その中で、対EUとの関連で、フランス自身の主権とEU主権の関係、より具体的な移民政策やフランスの国益との関係、EUの財政や経済政策の中身などが争点となっていくことが予想される。