1月よりフランスが欧州連合(EU)議長国となることから、マクロンが野心的なEU政策を発表したが、これは、来年の大統領選挙を意識したもので、ドイツはじめ他のEU加盟国が受け入れるかは疑問であると、ニューヨーク・タイムズ紙のパリ支局長ロジャー・コーエンが同紙2021年12月9日付で解説している。
21年12月9日の会見で、マクロンは、22年1月からのEU議長国としての抱負と構想を述べたが、あたかもフランス大統領再選へ向けての決意表明のような印象を与えるものであった。マクロンは、中国と米国の対立の中で、現在の域内協力に重点を置くEUが生き残るためには、完全な主権を持ち、自由な選択を行い、自らの運命の支配者となるEUに移行しなければならず、再出発、力、帰属が議長国としてのキーワードであるとして、いくつもの具体的なイニシアティブに言及した。
具体的には、シュンゲン協定の見直しと移民危機に備えた緊急支援メカニズムによるEU国境管理の強化、EUの防衛協力の深化、2月のEU・アフリカ首脳会議の開催とアフリカ支援策の策定、6月には西バルカンに関する会議の開催、温暖化防止やハイテク産業への投資による雇用創出と成長モデルの模索、デジタル分野での公正な競争や不当な利用を排除するための法整備、欧州の社会モデルとして欧州最低賃金の制定、欧州のヒューマニズムの再考とそのために5月に「欧州の未来に関する会議」開催、6月に欧州大学会議開催、25歳以下の青年を対象とする6カ月間の社会奉仕制度など、盛りだくさんである。マクロンが再選されたとしても、6カ月の議長国の任期で十分な成果を上げられるとは思いにくい。
マクロンとしては、EU議長国に就任する機会をとらえてメルケルの去ったEUにおいて議長国として主導権を取り、その理想とするEU改革を進めたいのであろうが、同時に仏国民に欧州のリーダーとしてのイメージを植え付け、大統領選挙にも有利になると考えているのであろう。しかし、EU加盟国から反発を招けば逆効果となる恐れもある。