真犯人と見せる緊迫した対話
容疑者が一同に会して、アームチェア・ディテクティブが謎解きをする、ラストシーンもこのドラマは、素晴らしい。「安楽椅子探偵モノ」のお約束の意外な犯人をあぶりだすだけではない。心理劇が繰り広げられる。
風呂光が「鍵を拾ったのは」といいかける。
整は、「やはりそうでしたか」と、推理どおりの展開を楽しむように、取調官の薮に迫る。
「あなたが、捜査令状をとったときに『おしいれで大麻でもさいばいしているのか?』『PCのなかになにかやばいものでも入っているのか?』と聞いたのが、気になっていました。まるで僕の部屋に入ったようなので」
「あなたの奥さんとお子さんをひき逃げした犯人は、あの殺された大学生だと思ったのではありませんか?」
薮が、整のカギを拾ったのは、その大学生を大学までつけていたときだった。整のカギの型をとって、交番に届けた。
「最初はなにをするか考えていたわけではない」
整はいう。「あの大学生は、ひき殺しを認めましたか?」
薮は答える。「認めなかった。認めたら、署まで引っ張ってくるつもりだった」
整 「復讐は楽しかったですか?」
薮 「なにお!」
整 「こわかったんですよね。復讐のために、仕事の合間に膨大な時間を使って。奥さんとお子さんが生きているときに時間を使うべきでしたね。僕が子どもだったら、こういっていますよ。『なんだか楽しそうだね。僕らに会いたくなくて刑事の仕事をしていたんだ。僕らが死んだら楽しくなったんだね』」
薮 「おまえに子どもの気持ちなんてわかるか!」
整 「子どもはいないけれど、子どもだったころはありますから。薮さん、もうひとつ考えてくれませんか。高校生のころ、亡くなったあいつがこういってたんです。『成績が下がって、おやじに車はとりあげられた。でも、先輩がほとんど使っているのでかまわないんだけどね』と。僕は奴の真実はわからない」
薮 「そんなことあるか!」
そのとき、巡査の風呂光(伊藤)が現れる。「薮さんの奥さんとお子さんをひき逃げした犯人がいまきています。この署にいます。大学生が殺されたので、こわくなって出頭してきたようです」と。
菅田将暉と伊藤沙莉コンビのこれからの謎解きが楽しみである。そして、事件の裏にひそむ、人間の「業(ごう)」が描けれて行くことを期待したい。