2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2022年1月13日

真犯人と見せる緊迫した対話

 容疑者が一同に会して、アームチェア・ディテクティブが謎解きをする、ラストシーンもこのドラマは、素晴らしい。「安楽椅子探偵モノ」のお約束の意外な犯人をあぶりだすだけではない。心理劇が繰り広げられる。

 風呂光が「鍵を拾ったのは」といいかける。

 整は、「やはりそうでしたか」と、推理どおりの展開を楽しむように、取調官の薮に迫る。

「あなたが、捜査令状をとったときに『おしいれで大麻でもさいばいしているのか?』『PCのなかになにかやばいものでも入っているのか?』と聞いたのが、気になっていました。まるで僕の部屋に入ったようなので」

「あなたの奥さんとお子さんをひき逃げした犯人は、あの殺された大学生だと思ったのではありませんか?」

 薮が、整のカギを拾ったのは、その大学生を大学までつけていたときだった。整のカギの型をとって、交番に届けた。

「最初はなにをするか考えていたわけではない」

整はいう。「あの大学生は、ひき殺しを認めましたか?」

薮は答える。「認めなかった。認めたら、署まで引っ張ってくるつもりだった」

整 「復讐は楽しかったですか?」

薮 「なにお!」

整 「こわかったんですよね。復讐のために、仕事の合間に膨大な時間を使って。奥さんとお子さんが生きているときに時間を使うべきでしたね。僕が子どもだったら、こういっていますよ。『なんだか楽しそうだね。僕らに会いたくなくて刑事の仕事をしていたんだ。僕らが死んだら楽しくなったんだね』」

薮 「おまえに子どもの気持ちなんてわかるか!」

整 「子どもはいないけれど、子どもだったころはありますから。薮さん、もうひとつ考えてくれませんか。高校生のころ、亡くなったあいつがこういってたんです。『成績が下がって、おやじに車はとりあげられた。でも、先輩がほとんど使っているのでかまわないんだけどね』と。僕は奴の真実はわからない」

薮 「そんなことあるか!」

 そのとき、巡査の風呂光(伊藤)が現れる。「薮さんの奥さんとお子さんをひき逃げした犯人がいまきています。この署にいます。大学生が殺されたので、こわくなって出頭してきたようです」と。

 菅田将暉と伊藤沙莉コンビのこれからの謎解きが楽しみである。そして、事件の裏にひそむ、人間の「業(ごう)」が描けれて行くことを期待したい。

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