2022年12月4日(日)

バイデンのアメリカ

2022年1月24日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

アフガン撤退の悪夢もよぎる

 また、CNNテレビは、ごく最近になって、きわめて悲観的な見方が米政府当局者の間で広がりつつあるとも報じている。

 現段階で米側が、経済報復以外にロシア軍の侵攻を思いとどまらせる有効な措置を打ち出せない背景には、昨年夏のアフガンからの米軍撤退をめぐる混乱で世論の手厳しい批判を浴びた直後であり、今また、ウクライナへの米軍投入を決断した場合、再び国民の反発を招きかねないとの苦渋の判断がある。

 一方で、もし、プーチン大統領がバイデン政権の弱腰対応につけ込み、ウクライナに大挙して部隊を一気に投入した場合、前回2014年ロシアがウクライナのクリミア半島を力ずくで併合し既成事実化した時と同様、西側諸国の動揺と混乱は避けられず、支持率低迷にあえぐバイデン氏が一層苦境に追い込まれることは避けられない。

議論が浮上している「同時的軍事行為」

 そこに加えて昨年末から、真剣な論議の的になってきたのが、「中露による台湾、ウクライナ同時的軍事行動」という最悪シナリオ説だ。

 中でもいち早く問題提起したのが、欧州の外交・安全保障問題に精通し、外相としての経験も長いカール・ビルト元スウェーデン首相だった。

 ビルト氏は昨年11月末、国際オピニオン・フォーラム「プロジェクト・シンジケート」への寄稿文で以下のように述べた:

 「広大なユーラシア大陸は今や、東西両方面における敵対行動で覆い尽くされつつある。西側前線では、ロシアがウクライナ国境沿いに大規模な兵力を配備し始める一方、東側の前線では、台湾に対する中国の動きが極めて憂慮すべき段階に近づいてきている。ある最近の米シンクタンクによる〝ウォーゲーム〟研究によれば、もし、中国が台湾侵攻に踏み切った場合、米軍として反撃するための信頼できる選択肢は数限られる、と結論付けている。一方、プーチンのウクライナに対する戦略的意図は明白であり、同国が中国にとっての台湾同様、歴史的にもロシア領土の一部であり、独立は絶対容認しないとの確固たる信念に基づき、武力併合の準備を着々と進めてきた」

 「加えてもし中国が、台湾を力ずくで併合した場合、ロシア軍によるウクライナ侵攻が欧州全体の安保秩序を転覆させるのと同様、東アジアの秩序激変につながることについて疑う者は誰一人いない。しかし、十分に理解されていない事態がある。すなわちそれは、この東西両方面の事変が、何らかの『協調的態様』によって同時に引き起こされた場合についてだ。これら二つの征服行動が重なった場合、まさにグローバル・バランスそのものを根本から転換させ、その結果、過去数十年にわたり世界平和を支えてきた外交および安全保障のもろもろの取り組みへの弔鐘を意味することになる」

 「もちろん、このようなシナリオは考えすぎだとする指摘もあるかもしれない。しかし、中国は表向き、他国の内政への不干渉を宣言する一方、ウクライナの国家主権問題については満を持して沈黙を守り続けている。従って、中国はロシアのウクライナ侵攻について、自国の目的に合致するとみなした場合、ロシアの行動を支持しない理由はないはずだ」(21年11月25日付)

ロシア熊と中国パンダの共通の種族

 続いて、豪州有力紙の『シドニー・モーニング・ヘラルド』が去る12月初め、ピーター・ハーチャー政治外報部長の「米国は同時に二つの戦争は戦えない――バイデンの最も不都合な悪夢」との見出しの次のような記事を掲載した:

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