2022年12月5日(月)

バイデンのアメリカ

2022年1月24日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「ロシア熊と中国のパンダは体毛パターンこそ異なるものの、共通した特性を備えている。好みの餌食も根本的には違っているが、もともと種属としては共通している。最近の動きは、両国が領土征服計画面での協調に関心を抱いているのではないかという厄介な問題を提起している。すなわち、ロシア熊がウクライナほしさに爪を伸ばす一方、中国のパンダは、台湾という好物を少しでも口にしようとだんだんと接近しつつあるのだ。そして双方とも、早ければ22年中にも、それぞれ目指すターゲット掌握のための侵略的行動に出ることを検討しているという切迫したいくつもの警告が発せられている」

 「バイデン大統領はこうした危機を回避すべく、過去3週間のうちに中露両国首脳と相次いで首脳会談を行った。しかし、ロシアまたは中国のどちらかが、渇望する領土奪取に突入した場合、それ自体が大惨事を意味する。もし、両国が同時に行動を起こしたとしたら、より悲惨な結果となる。ロシアと中国は目下はパートナー同士であり、同盟関係にはないものの、西太平洋で史上初の合同軍事演習を実施するなど、過去数年の間に多方面にわたる協力関係を拡大してきた。両国の一致した関心は、反米的行動にあるのだ」21年12月7日付)

中露は戦略的歴史的思考が共通

 さらに年明けの1月初めには、ウォールストリート・ジャーナル紙が米ハドソン研究所のセス・クロプシー「アメリカン・シーパワー・センター」部長による「ウクライナ・台湾二方面戦争について」と題する以下のような論評を掲載した;

 「最近、プーチン大統領によるウクライナ侵攻に向けた国境沿いの兵力増強により、危機は目前に迫りつつある。同時に、米政府当局者たちは、じわじわと沸点に向かいつある台湾紛争にも焦点を当て始めている。しかし、心すべきことは、両者は、ユーラシア大陸におけるより大規模な政争の一部として互いに連結したものであり、それぞれを切り離して見るべきではないということだ。ウクライナと台湾は地理的には離れてはいるものの、ロシアおよび中国にとって、戦略的歴史的思考上、共通した位置を占めている。ロシアにとって、ウクライナ掌握は黒海における地位を固めると同時に、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のルーマニア、ブルガリア両国に向けた風穴を開けることを意味する。中国にとっての台湾確保は、東シナ海、南シナ海からベトナム方面に至る『第一列島線』突破の足掛かりとなり、日本、フィリピンさらには中部太平洋米国領を標的にした攻撃作戦の演習をも可能となる」

 「台湾侵攻それ自体に関する中国人民解放軍にとっての課題は、台湾軍の防衛体制突破が可能かどうかではなく、米国および同盟連合軍の対応以前にそれができるかどうかにかかっている。この点、中露両国が共同行動に出る場合、ロシアとしてはアジア太平洋海域において同時に地上軍または海軍兵力を投入する必要はない。ロシア太平洋艦隊は、日本本土から台湾防衛に向かう日米艦船部隊を阻止するのに十分な潜水艦を保有しており、そのことが中国による台湾侵攻の成功確率を高くすることになる」(22年1月4日付)

接近する動きも近年は顕著

 上記のように、「中露同時軍事行動」に対する警戒が関係各国で高まってきた背景には、中露両国が今世紀に入って以来、自由主義世界の結束の動きに対抗して互いの〝戦略的打算〟の観点から急速に接近しつつあることが挙げられる。

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