2024年6月18日(火)

Wedge OPINION

2022年1月28日

 たとえば、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」や北アフリカの「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、マリ、ニジェール、ブルキナファソなどサヘル地域の「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」、シリアの「フッラース・アル・ディン(HAD)」、ソマリアの「アルシャバブ(AS)」など、その活動は基本的に地域レベルだがアルカイダを支持するイスラム武装勢力は今日でも存在する。

 また、イスラム国を巡る情勢でも、「イスラム国のホラサン州(ISK)」、「イスラム国の西アフリカ州(ISWAP)」、「イスラム国の中央アフリカ州(ISCAP)」などイスラム国の支持組織も同様であるが、特にアフガニスタンではISKによるテロが一昨年から昨年にかけて約5倍と大幅に増えており、コンゴ民主共和国の東部やウガンダなどではISCAPによるテロ事件が増加傾向にある。

イラクとシリアではイスラム国がテロ活動を継続

 また、今日では、支持組織だけでなく、アルカイダとイスラム国の本体への懸念も広がっている。上述のように、米軍がアフガニスタンから撤退し、タリバンが実権を握る形になったが、未だにタリバンを政府承認する国はなく、テロとの関連で言えば、タリバンとアルカイダは関係を断ち切れないとする見方が強い。そして、米軍のプレゼンスがなくなることでアルカイダが自由に活動できる時間と空間が拡大し、それによって同国が再びテロの温床になることへの懸念が聞かれる。

 イスラム国についても、国連の統計では、イラクとシリアでは未だに1万人以上のイスラム国戦闘員が自由に活動しているとも言われ、昨年もイラクのバグダッドでは数十人レベルが犠牲となる自爆テロ事件が相次いで発生し、シリアでも今年1月、北東部ハサカ県にある刑務所をイスラム国戦闘員が襲撃して100人以上が死亡した。

 この襲撃は、2019年3月にイスラム国が最後の支配地だったシリア東部バグズを奪還されて以降で最大規模の事件となった。この刑務所には3500人あまりのイスラム国のメンバーが収監されており、襲撃した戦闘員たちは仲間の解放を狙って襲撃したとみられ、数十人が脱走したとの情報もある。

日本の情報収集能力低下の恐れ

 テロの温床化が進み、アルカイダが勢力を盛り返し、再び9.11のようなテロを実行したり、イスラム国が再びイラクとシリアで広大な領域を実行支配したりするなどは考えにくい。しかし、これらイスラム過激派は欧米などを攻撃する意思は放棄しておらず、過去にアフガニスタンやイラク、シリアがテロの温床となり、それが9.11やイスラム国の誕生に繋がったということを我々は忘れるべきではないだろう。

 国際社会のテロ情勢への関心低下がテロ組織に自由に行動する時間と空間を与え、そこから新たなテロリスクが生じる恐れは否定できない状況と言える。

 今後の動向においては、二つのことが懸念される。一つは、情報収集・共有が困難になる恐れだ。たとえば、米軍がアフガニスタンから撤退したが、安全保障の専門家たちの間では、今後アルカイダやイスラム国系組織などアフガニスタン国内のテロ組織の動きで正確な情報を入手することが困難になるとの懸念が聞かれる。


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